HOP!薬剤師

食事や運動の提案も! 総合的な医療に注力する「いろり薬局」の未来

かかりつけの病院は決まっていても、かかりつけの薬局が決まっている人は少ないように思います。
一般の方は「薬局はどこも同じ」といったイメージを持っているはずです。

「薬局がどこも同じだと思われてしまう原因として、調剤医療費の増大や人手不足による医療サービスの低下など、薬局側にも問題がある」と薬剤師の小林晃洋(こばやし・あきひろ)さんは言います。

小林さんが薬剤師を勤める「いろり薬局東長崎店」では、「在宅医療」「予防医療プログラム」「健康管理アプリ(開発中)」といった様々な医療サービスを展開。調剤薬局という場所を、ただ単に薬を受け渡しする場所ではなく、今までのイメージとは違う場所にしていきたいと小林さんは考えているのです。

話を伺った人:小林晃洋(こばやし・あきひろ)さん

いろり薬局東長崎店薬剤師。現在は、薬局経営だけではなく医師・薬剤師・看護師の派遣紹介事業にも力を注ぎマルチに活躍している。

いろり薬局公式Twitter

薬局ならではの価値を具体的に示さなければ差別化できない

――色々お聞きしたいことはあるのですが、まずは小林さんが薬剤師を目指したキッカケを教えてください。

小林さん:実を言うと、薬剤師になろうとは思っていませんでした。学生時代に力を入れていたバンドでCDも発売し、メジャーデビュー目前だったんです。だから、薬剤師はすぐに辞めて音楽1本で食べていこうと、当時は本気で考えていました。

――音楽で食べていこうと決めていたはずの小林さんが、薬剤師を続けようと決めたのはなぜですか?

小林さん:患者さんのご家族から「小林さんじゃなきゃダメなのよ」と言われたことが非常に大きいですね。今振り返ると、当時の僕は人様の命を預かっているという責任感が足りず、『薬剤師』という仕事や自分の存在価値がわからなくなっていたんです。

自分じゃなくてもできる仕事、とさえ思っていましたから。でも、そうではなかった。それを気づかせてくれたのが、薬剤師1年目の頃に出会った一人の患者さんの言葉だったんです。
自分を必要としてくれている人はこの世の中に必ずいます。いかに価値を見出せるかどうかは、自分次第だと思うんです。

――上司から、仕事ぶりを褒められたり実績を評価されるのはもちろんですが、患者さんからの言葉って本当に嬉しいですよね。その積み重ねがお互いの信頼へと繋がるはずですし。

小林さん:はい。正しい薬の知識を提供するのは、薬剤師として当たり前のことですが、自分で処理しきれない感情や悩みをただ聞いてほしいだけの患者さんもたくさんいます。だからこそ、真摯に向き合いじっくりを話を聞こうとする姿勢が大切なんじゃないかな、と思うんです。

病院の近くにあるという理由だけでは薬局の優位性は低くなる

――ここ数年は、「かかりつけ薬剤師」や「健康サポート薬局」が増えて在宅医療に力を入れる薬局が増えていますよね。その中でも、貴院が提供している「予防医療プログラム」は業界的に見ても珍しい取り組みだと思うのですが、そもそもなぜ始めようと思ったんでしょうか?

小林さん:私は十数年間、薬剤師として働いていますが、やはり薬には限界があると思うんです。薬を服用することによって、一時的に症状を改善できるのは間違いありません。ですが、「病気になってから医者に行く」のではなく「病気にならないための生活習慣」を意識することでより多くの人が健康的で幸せな生活を送れるようになるはずです。

おっしゃる通り、薬だけではなく、健康や介護など患者さんのニーズに沿った相談に応じる「かかりつけ薬局」は飛躍的に増えています。しかし、薬局店舗数の方がコンビニよりも多いと言われている今の時代、右向け右で他の薬局の真似ごとばかりをしていても、淘汰されてしまうと思うんです。

――というのは、差別化をはかる必要があるということでしょうか?

小林さん:そうです。これまで多くの薬局は、「病院の近くにあるから」という理由から患者に選ばれてきたと思います。

しかし、医療サービスへのニーズが高まっているこのご時世、「近い」という利便性だけでは、薬局を選んでもらうのは非常に難しい。近さだけを重視する人は、駅ナカに出店する面対応薬局に行くでしょうし、大きな総合病院にかかる方は門前薬局に行くはずです。

ですが、我々のような地域密着型を目指す町の薬局は、どれだけ患者さんの健康、もっというと人生に寄り添うことができるかが重要だと思います。薬剤師になりたての頃、患者さんが怒って帰ってしまったことがありました。丁寧に服薬指導をすること、薬剤師という技能を知らしめることが正義なのだと勘違いしていたんです。

小林さんが考えるこれからの薬局のあり方

小林さん:薬剤師である以上、薬の正しい知識を患者さんに提供するのは当然ですよ。その経験から私は、患者さんと真剣に向き合う大切さを学びました。正しい知識を提供することだけが、薬剤師の存在意義ではありません。

わざわざ病院に行くほどではないけれど体の不調を気軽に相談できたり、そばで健康をサポートできたり、人生という広い視点で目の前の患者さんと向き合うこと。

それこそが、今後の薬剤師、薬局にとって患者さんから選ばれるために一番必要なことだと思っています。まだ始まったばかりですが、介護食についてを学ぶセミナーも定期的に進めていく予定です。

――最後に、「いろり薬局東長崎店」の今後の展望を聞かせてください。

小林さん:平均寿命と健康寿命ともに伸び続け人生100年時代とも言われていますし、介護や健康相談など多様なニーズにも柔軟に対応できる場所、ライフスタイルに合わせた総合的な医療サービスを受けられる場所でありたいですね。

「予防医療プログラム」はまだスタートしたばかりなのですが、たくさんお問い合わせをいただいています。女性の場合、食生活がニキビや肌荒れの原因とっている場合も意外と多いんですよ。気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。

――「いろり薬局」に来れば、ライフスタイルに合わせた総合的な医療サービスを受けることができそうですね。

小林さん:はい。調剤薬局としての機能をだけでなく、介護や健康相談など多様なニーズにも柔軟に対応できる場所、患者さんにとっての心の拠り所であり続けたいと思っています。安心や癒しだけではなく、来院された患者さんが常にドキドキ、ワクワクできる場所にしていきたいですね。

まとめ

今回は、2018年6月東長崎駅近くにオープンしたばかりの「いろり薬局東長崎店」の薬剤師、小林晃洋さんにお話を伺いました。体調・健康管理のためのアプリ開発や食方箋の提案に加え、介護食の勉強会などこれまでにない変わった取り組みを行っていく予定だと言います。

HOP!
HOP!-関わるヒトすべてをポジティブに-
さまざまな業界で「今の仕事に悩む人」がより自分らしく働くためのサポートをするメディアです。
詳しくはこちら

関連記事

薬剤師とメディカルパートナーが生む恵比寿中央薬局の新しいカタチ

この記事の目次女性が安心して長く働き続けられる場所でありたい薬剤師業界を支える女性薬剤師たちの活躍メディカルパートナー(MP)の存在があってはじめて、薬剤師としての仕事が活きてくるまとめ 話を伺った人 ...

  • 🕒
  • 2020.01.15更新

【ヤクジョ取材】薬剤師が転職サイトを使うメリットをエージェント…

薬剤師が転職するとき、「転職エージェント」を活用するのは当たり前の時代になりました。 ※そもそも転職エージェントって何をするの? 「転職をしたい」と考えている相談者に、希望条件にあった企業を…

  • 🕒
  • 2020.01.15更新

『Musubi』が薬剤師と患者さんのコミュニケーションを手助けしてく…

東京都板橋区にある「りおん薬局 志村坂店」は、在宅訪問医療を中心におこなっている地域密着型の調剤薬局です。「りおん薬局 志村坂店」で働く薬剤師の方々は、患者さんとのコミュニケーションを何よりも大切に…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

チーム医療に力を注ぐ田原町薬局が目指す姿とは?

安心、安全な医療を望む患者さまや家族の声が高まる昨今、近年ではチーム医療という考え方が、人びとの間に広まっています。 東京都台東区にある「田原町薬局」も、介護施設との連携に力を入れている薬局のひと…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

救急のインフラを整え地域薬局の価値を高める「薬剤師メディカルラ…

目の前で交通事故が起きたら、そしてその人が自分が投薬したばかりの患者さんだったら、あなたはどうしますか?119番通報をして救急隊員や救急救命士が駆けつけるまでの間、薬歴を知っている薬剤師だからこそで…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

尊い命を救うスペシャリスト|『国境なき医師団』の薬剤師が果たす…

2011年に発生した東日本大震災、2016年に起きた熊本地震では、「国境なき医師団(MSF)」がいち早く被災地に駆けつけ、懸命に緊急援助活動にあたりました。 津波や地震といった自然災害の被災地、パレスチ…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

薬剤師という肩書きに捉われない。等身大で患者と向き合う岡本さん…

大手製薬会社でMRとして活躍後、2年程前に薬剤師として再スタートを切った岡本翔佑さん。数々の営業実績を残していた岡本さんが、製薬会社を辞めてまで薬剤師にキャリアチェンジしたワケと地方薬局の目指すべき…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

東洋経済「調剤は誰がやっても同じ」薬剤師は機械?専門家に聞いた!

先日、東洋経済オンラインの「薬局が病院の周りにやたらと溢れかえる事情」という記事が大きな話題と…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

専門性を生かして働きたい!緩和薬物療法認定薬剤師として日本調剤…

今回は、日本調剤株式会社(以下、日本調剤)で緩和薬物療法認定薬剤師として活躍する原田寿(はらだひさし)さんを取材しました。 緩和ケア・在宅医療の現場で働きたいと考えるようになったきっかけや…

  • 🕒
  • 2019.11.27更新

「100万回辞めようと思った」。医療と患者に寄り添うMRの存在意義と…

こんにちは。ライターの渡辺です。本日は、公益財団法人MR認定センターの事務局長を務める、近澤洋平(ちかざわ・ようへい)さんにお話を伺います。 医師を目指していたという近澤さんの、これまでの葛…

  • 🕒
  • 2019.11.08更新

「この人なら何でも話せる」頼られる存在を目指す小林綾子さんの想い

この記事の目次日頃の生活習慣を変えることが体質改善の第一歩根気よく続けることで効果を発揮する漢方薬の力まとめ 話を伺った人:小林綾子(こばやし・あやこ)さん 東京都港区にある「ニホンドウ漢方ブティック ...

  • 🕒
  • 2019.11.05更新

薬剤師が語る予防医療の重要性「病院での治療だけが医療ではない」

2017年、厚生労働省は「平成29年労働安全衛生調査(実態調査)」を実施。18,000人の労働者のうち59.5%が“ストレスを抱えている”と回答しています。その内訳を見てみると、「仕事の量や質」「仕事の失敗・責任の…

  • 🕒
  • 2018.11.12更新