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薬剤師としてのスキルアップだけでなく、人と人のつながりを大切に。北海道科学大学薬学部の「生涯研修認定制度」の内容とは

現場で活躍する薬剤師や医師による講義を、オンラインで実施している北海道科学大学薬学部
今回は北海道科学大学薬学部の「生涯研修認定制度」について、北海道科学大学の今田愛也さんにお話を伺いました。

今田 愛也(こんだ あいなり)さん

ご経歴
北海道薬科大学薬学部卒。天使病院薬剤部を経て2009年に講師、2011年准教授、2015年より教授。2010~2011年アリゾナ大学薬学部に留学。2020年薬剤師生涯教育センター長。

現在の仕事
産科・婦人科領域の疾患に投与される医薬品の適正使用に関する研究。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

 

1.生涯研修認定制度の内容は?

ーまず、生涯研修認定制度の内容について教えてください

本制度には3つのプログラムがあります。
1つ目は、薬剤師アップトゥデート講座です。本学の同窓会および日本薬学会北海道支部で共同開催しており、全国各地の医療現場で活躍されている先生にご講演いただいております。2020年12月までに132回開催されています。

2つ目は、薬剤師スキルアップ講座です。臨床に関わる薬剤師に必要な技能や、薬剤師のあるべき姿を見据えたスキルの習得を目的としています。離職していた薬剤師や、臨床現場への復帰を考えている薬剤師が多く受講していますね。

3つ目は、病態・薬物治療フォローアップ講座です。医師と薬剤師が同じテーマに沿って講義を行ないますので、疾患をより深くまで学べるところが強みの講座です。医師と薬剤師がそれぞれ1時間半ずつ担当し、合計3時間で構成されたプログラムです。

これら3つの講座は、常に最新情報をキャッチアップし、毎年内容をアップデートしています。受講した方のアンケートでは「満足」という回答が95%に達しています。「最新トレンドを押さえているので実務に活かせそう」といった声もいただいております。

これらのアンケート結果は先生にも伝え、次年度の講座改善にも活かすことで高品質な講義が維持できています。
その甲斐もあり毎年平均1,000名ほどの方に受講いただいております。

-薬剤師や医師に講義をしてもらう形式は珍しいですね

そうですね。医療従事者として活躍している本学の卒業生が、現場のスキルや知識を活かして講演をしてくださるんです。本学が目指す「地域に根ざした教育活動」において、卒業生の協力はとても大切だと考えています。

-講義のインターネット配信を始めた背景は何ですか?

2017年度まで本学は小樽市の桂岡(現在は札幌市手稲区)にあり、交通の便が良いとはあまり言えません。だからこそ、多くの方に講義を聴いていただくためにインターネットを有効活用すべきだと考えました。2009年から、講義を録画・編集した動画を配信しています。

さらに昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で、対面による講義は中止を余儀なくされ、それをきっかけにYouTube配信も始めました。

またスキルアップ講座では、グループディスカッションをするためにZoom(ネット上でお互いの顔を見ながら会話ができるサービス)も使っています。

-学びを振り返る「ポートフォリオ」について教えてください

本学では受講を通じて考えたこと、それを現場で実践して見えてきた改善点などを記載し提出する「ポートフォリオ」を重視しています。それを大学の教員が評価・修正して受講生に返却する方法をとっています。

ポートフォリオに力を入れているのは、薬剤師のスキルアップを目指すうえで、評価・反省・研修にしっかりと向き合うことが必須だと考えているからです。

2.生涯研修認定制度の設置背景・目的

-生涯研修認定制度を設置した背景や目的を教えてください

薬剤師は地域全般に医療の安心安全を届ける役割を担います。そして大学は、薬剤師を輩出するだけでなく、実際に現場で活躍する薬剤師のスキルアップ・研鑽を支援するべきだと考え、生涯研修認定制度を設置しました。

がん患者に対する薬剤師や医療機関の主体的な対応が認められて、診療報酬制度が改定されたように、本学で薬剤師のスキルアップを支援することで、主体的な動きが促進され、そして社会により良い影響を与えていけると考えています。地域医療にも安心安全を届けられると考えています。

3.生涯研修認定制度によって薬剤師が得られる大きな価値

-生涯研修認定制度によって薬剤師はどのように成長できるでしょうか?

本研修を通じた知識の習得や自己研鑽はもちろん、大学とのパイプも形成されるでしょう。またアンケート結果共有や本学の機器の共同使用といった、地域に根差した共同研究にもつなげられると思います。

-受講を検討している薬剤師にメッセージをお願いします

受講を通じて、大学や研修センターと太いパイプを築き、継続的に情報交換をできればと思います。それができれば現場でより活躍でき、さらには地域医療に安心安全を届けていけるはずです。

また本学には工学部や保健医療学部、未来デザイン学部もあるので、他学部にも興味を持ってもらい、つながりを活かしてもらいたいですね。たとえば薬学の壁を飛び越えて「構造設備のことは工学部の人に聞いてみよう」とアクションを起こすのも良いでしょう。さらにオンラインであれば地域が離れていてもヒトとヒトのコミュニケーションが可能になります。本講座を通してつながりを作っていきたいですね。

北海道科学大学の生涯研修認定制度の公式HPはこちら

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