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「コロナ禍でようやく理解された」月刊『最新医療経営 フェイズ・スリー』が伝える医療経営の重要性とは

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医療機関は患者数・処方せん枚数の激減といった深刻な影響を受けています。

厳しい経営に頭を悩ませる医療関係者も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、医療機関における経営の重要性について発信を続ける月刊誌『最新医療経営 フェイズ・スリー』編集長の八木さんにお話を伺いました。

八木一平(やぎ・いっぺい)さん

フェイズ・スリー編集長八木さん

大学卒業後、文房具メーカー、編集プロダクション、化粧品・日用品業界誌を経て株式会社日本医療企画に入社。「最新医療経営フェイズ・スリー」「介護ビジョン」などの編集を担当し、現職。

現在は「最新医療経営フェイズ・スリー」の編集長として、病院の抱える経営課題をさまざまな角度から取り上げる。病院のマネジメントだけでなく、激変する医療政策についてもレポートする。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

1. 医療経営の重要性を伝えたい。フェイズ・スリー創刊の背景とは

ーまず『最新医療経営 フェイズ・スリー』創刊の背景について教えてください

1983年、当時の厚生省保険局長である吉村仁氏が、「医療費の増大は国を滅ぼしてしまう」と主張しました。いわゆる医療費亡国論ですね。これに先立つ1980年に、当社の前身となる株式会社能登企画を現社長の林諄が設立しました。

本人はもともと全国紙の経済部記者だったのですが、医療界を見て「こんな経営不在のままでは先行きが危ない」という危機意識があったようで、実際、吉村氏からも「いずれ医療界もあなたのような経済部記者が報道するような時代になる」と言われていたそうです。

1981年に日本初の医療経営月刊誌「ばんぶう」を創刊したのに続き、 医療費亡国論を受けて株式会社日本医療企画では「医療に経営を取り入れる重要性を業界に投げかけ、財政資源など具体的な経営について発信しよう」と考えました。そして翌年の1984年に月刊『最新医療経営 フェイズ・スリー』を創刊したのです。

平成31年時点で、すでに医療費を含める社会保障費は一般会計の30%超を占めるようになっています。「医療費亡国論」が現実になりつつあるのかもしれません。

ー医療機関に「経営視点の重要性」を理解してもらううえでの課題はありますか

創刊以来、医療経営の危機意識がいかに重要かを訴えてきましたが、まだご理解いただけていない病院が多いことですね。

その背景には、医療には絶対的な需要があり、経営を重視しなくても何とかなることや、保険診療によって定期的にお金が振りこまれ、たとえ赤字でもなんとか経営できる、という点が挙げられると思います。

しかし現在、新型コロナウイルスの感染拡大によって、「なるべく病院へ行かない」という動きが広がりました。

先日「私たちは患者様から選ばれていたんだ」という病院経営者の方の言葉を聞き、この状況になりようやく医療に経営を取り入れる重要性が認識されたと思いました。

2. 病院経営のヒントを届けるために。フェイズ・スリーの内容・特徴

ー雑誌の内容や特徴について教えてください

フェイズ・スリーでは、病院経営をあらゆる角度から考えるヒントを提供したいと考えています。

傍観者ではなく当事者意識を持ち、読者に情報を提供することを意識しています。

「どういう情報を提供したら医療機関の経営をサポートできるか」という姿勢を大事にしていますね。

ー医療雑誌は数多く存在しますが、フェイズ・スリーならではの特徴はどういった点にありますか

診療報酬改定の実態などについて、病院経営に活かす方法を視点を大事にしながら発信している点ですね。

改定された項目にはどのような背景があるのか、たとえば加算が増えた項目をどう受け止めるべきか、病院経営にどう活かせばいいか、といった内容です。

理想ももちろん大事ですが、それだけでなく「本当にその項目を算定できるのか」「算定要件は自院の診療に沿うものなのか」といったことを考えてもらえるよう、 現場に寄り添った誌面づくりを心掛けています。

フェイズ・スリー薬剤師特集号

ー誌面づくりを通じて見えてくる医療現場の問題点はありますか

薬剤師についていえば、「医師が病院薬剤師の能力を活かせていない、そして薬剤師も指示待ちの姿勢で専門性を活かしきれていない」という問題があると思っています。
実際に薬剤師のなかには病院経営に参画している方もいます。フェイズ・スリーでは、特集や薬剤師の方の寄稿などで、その取り組みを誌面で紹介しています。

ー誌面をつくるうえでの課題はありますか

読者から「フェイズ・スリーを読んでいると医療業界は絶好調のように見えるけれど、実際は苦しい状況なんじゃないか」と指摘されることがあります。

そんな時は実態を取りに行く重要性を強く感じますね。

3. 経営は経営者だけが考えるべきじゃない。薬剤師だからこそできること

ー薬剤師がフェイズ・スリーを読むことで得られる学びや気づきは何でしょうか

自分たちが病院においてどのような状況にあるのか、経営の目線で理解するきっかけが得られるのではないでしょうか。

チーム医療が進むなかで、経営は経営者だけでなく働く全員が考えるべきです。

特に薬剤師は、高齢患者が増えていく中で薬物療法の重要性がますます高まっていることから、患者・医師双方とのコミュニケーションにおいて非常に重要な立場にあり、医療の重要な部分を担っています。だからこそ目の前の患者だけでなく、病院や地域医療にどのように貢献していくかも考えていただきたいですね 。

また、今薬剤師には服薬指導や管理の適切なマネジメントが一層求められています。

たとえば、服薬指導や服薬管理を進めていくうえで 起こりうる課題に対して、薬剤師はプロフェッショナルとして貢献できることが多くあります。フェイズ・スリーでは実際の事例を伝えているので、参考にしていただけるところも多いかと思います。

フェイズ・スリー誌面

コロナ以降、今まで以上に病院に”経営”という考え方が求められています。薬剤師も例外ではなく、経営目線を踏まえて従事していただければ、患者さんだけでなく医療機関、ひいては地域医療の安定のために、より一層、お力を発揮していただけるのではないでしょうか。

株式会社日本医療企画の公式HPはこちら

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