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城西大学薬学部が「栄養・薬学アドバンストコース」に込めた想いとは?薬だけではない栄養支援もできる薬剤師の育成を

薬のみにとどまらず、栄養支援の知識も有した薬剤師の育成を目指されている城西大学薬学部。
今回は城西大学薬学部に2020年度に新設された「栄養・薬学アドバンストコース」に関して、城西大学薬学部 薬学科教授の井上裕さんにお話を伺いました。

井上裕(いのうえ ゆたか)さん

▼ご経歴
鳥居薬品(株)研究員 (平成10年4月)
川崎病院(薬剤科) (平成12年4月)
城西大学(薬学部)(平成20年4月)
城西大学 教授(薬学部)(令和2年4月〜)

▼お仕事内容
病院での臨床経験を通じて、学生へ『癒しの空間』を提供できる人材育成に熱量を注ぐ!

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

1.薬だけではなく、栄養支援もできる薬剤師の育成を

-なぜ「栄養・薬学アドバンストコース」を創られたのでしょうか?

「治療」という枠にとどまることなく人々の健康をサポートする人材を育成するためです。

城西大学薬学部は「地域社会の人々が主観的QOL(quality of life:生活と人生の質)を高く維持し健康のより良い状態を目指すことの支援」を理念に掲げています。
この理念を起点に考えると、薬剤師が対象とするのは病気にかかられた人だけではないという結論に至りました。

皆さん病気にならない限り薬には頼りませんよね、なので薬剤師が薬にしか専門性がなければ病気予防のサポートができません。
そのため本学では、健康な状態の維持・増進や、病気の予防をサポートできる人材育成を目標にしています。
これは本学理事長であり、大正製薬ホールディングス代表取締役社長でもある上原明先生がよく言われることですが、健康状態を保つにあたって「運動・栄養・睡眠(休養)」の3つが大切です。
本学でもこの考えを大切にしており、病気の予防や健康寿命を伸ばすなど健康サポートには、栄養に関する知識が大切だと考えました。
そして、薬剤師が「栄養支援」を学べる栄養・薬学アドバンストコースを設置しました。

2.現場で使える実践的な栄養学を学べる「栄養・薬学アドバンストコース」

栄養・薬学アドバンストコースの学生

-「栄養・薬学アドバンストコース」とはどのようなコースなのでしょうか?概要や学習内容を教えて下さい。

「ひと味違う!城西・薬学」ですね。つまり、城西大学だからこそ行える食の面から健康をサポートするための、基礎から実践に近い応用まで学ぶことができます。
1年生では、栄養問題の現状とその課題や、食品と栄養素の関係など基礎的なことを学び、3・4年生になってくると実際に調理や、献立設計、各種病態に適した栄養療法と注意点など実際に現場に入ったときに活かせる内容を学びます。

この「栄養・薬学アドバンストコース」の強みは現場を経験した専門家から学べることです。一部の授業では、現場を経験したドクターや管理栄養士の方が、教鞭を取ってくださっています。そのため、より専門的かつ実践的な内容が学べます。

本学薬学部には、元々管理栄養士を育成する医療栄養学科があります。その学科では、管理栄養士の資格を持った先生に教鞭を取っていただいており、その関係から薬学科「栄養・薬学アドバンストコース」でも現場の知識や経験豊富な教員に教鞭を取っていただけるのです。

「医療における栄養」を受講学生の感想

  • 実生活から授業の課題につながるテーマを見つけられたことは、とても良い経験になった。
  • これを機に私ももう一度食に対する考えをしっかり見つめなおし 、健康的な身体作りをしようと感じた 。
  • 将来は、薬学だけでなく栄養にも強く、助けを必要としている人に必要とされる薬剤師になりたいと思った。
  • 私たちが社会問題において積極的にかかわることができる一つが食事だと私は考える。
  • 肥満や生活習慣病を防ぐためには一人一人がもっと食事に関心を持ち、カロリーや栄養バランスを意識していくことが大切だと思う。

3.薬を用いた治療にとどまらない活躍を薬剤師にしてほしい

-学生には「栄養・薬学アドバンストコース」で学んだ内容をどのように活かしてほしいと考えられていますか?

患者さんにとってのファーストステップとして相談の窓口となることや、地域医療やチーム医療での連携に活かしてほしいです。
薬剤師はドラッグストアや薬局などで、患者さんと身近にコミュニケーションをとることが多いです。そのちょっとしたコミュニケーションの際に、日々の食事のアドバイスができることで今までにはない価値が提供できると思います。

またチーム医療で薬剤師の役割は薬の専門家ですが、管理栄養士や医師とコミュニケーションをとる際に栄養に関して知っていることで、スムーズにコミュニケーションをとることができます。お互いの専門性はしっかりと担保しつつ、コミュニケーションをスムーズにすることによって、チームの出力を最大化させることができれば、薬剤師の職能が拡充し、地域に貢献できる薬剤師としての価値が上がっていくでしょう。

-最後に一言この記事を読む薬剤師や学生にメッセージをお願いします。

まだこのコースが開講して1年も経っていないため、今後どうなるのか明確にはわかりませんが、これからの世の中に栄養学を学んだ薬剤師は必要だと考えています。

将来、このコースを経験した薬学生が、薬学のブレイクスルーポイントとなり、医療人として薬を用いた治療にとどまらず、地域から期待される「ニューノーマル薬剤師」として活躍をしてくれることを願っています。

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