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こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。
先日、日本経済新聞・電子版でとても興味深い記事を目にしました。
記事の概要としては、
- 自宅で暮らす要介護高齢者に対する食事や入浴、レクリエーションなどの介護サービスは利便性が高く、また、それらを楽しみにしている高齢者も多いため、市区町村が設定する介護保険料の上昇を招いている。
- 65歳以上の人が払う保険料は、今年度から全国平均で月5,800円となり、介護保険制度が始まった2000年度の月2,900円の倍となっている。
- 大分市内でデイサービスセンター(通所介護施設)を経営するライフリーでは要介護高齢者を介護保険の利用から「卒業」させる取り組みを行っている。
- その理由とは「要介護者が生活援助サービスなどに安住してしまうと、自らの要介護度を重くしてしまうリスクがある」ためだという。
- 介護保険からの卒業運動は大分県内に広がり、2011年度の認定率は20.1%と全国平均を2.3ポイント上回っていたが、今年1月末には全国平均より0.4ポイント低い18.0%に改善させた。
- 県福祉保健部長らが着目しているのは介護保険法の理念だ。「保険給付は要介護状態または要支援状態の軽減または悪化の防止に資するよう行われるとともに…」。突きつめれば、要介護者にとって介護給付の度合いをより軽く、さらには不要な状態にもってゆくのが、法本来の理念ということになる。
というものです。
現在、地域包括ケアシステムの構築が進む状況で、地域に根ざした薬局・薬剤師による在宅医療への介入が期待されていますし、実際数多くの薬剤師が在宅医療に携わり始めています。
しかし、単に「患者さん宅に薬を届け、飲んでもらう」、それだけで良いのでしょうか?
上記でご紹介した記事を読んで、在宅医療について考えてみたいと思います。
※当サイトは口コミの一部を掲載しています。
介護保険制度の背景と現状
介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして、1997年に制定(2000年施行)された介護保険法に基づき運用されています。
基本的な考え方として
- 自立支援(要介護の高齢者ケアだけでなく、高齢者の自立を支援することを理念とする)
- 利用者本位(利用者自らの選択により、保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受けられる)
- 社会保険方式(給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用)
の3つが掲げられています。
そうした制度のもとで、施行以来15年以上経過した現在、65歳以上の被保険者数が約1.5倍に増加し、サービス利用者数は約3倍に増加しており、介護保険は、もはや高齢者の介護に無くてはならないものとして定着・発展しています。
しかしその分、介護保険予算も年々増加し、施行当時の予算が3兆6千億円の予算が、2016年には10兆円に達しています。前述の記事にもあったように、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)、第1号被保険者(65歳以上)とも介護保険料は上昇の一途を辿っています。
介護保険と薬局の在宅訪問業務
さて、僕たち薬局の薬剤師が行う在宅訪問業務には、大別して医療保険の対象である「在宅患者訪問薬剤管理指導」と、介護保険の対象である「居宅療養管理指導」「介護予防居宅療養管理指導」の3つがあります。
医療保険の対象となる場合と介護保険の対象となる場合とで、薬剤師が行う薬学的管理指導業務の内容に差異はありませんが、医療保険と介護保険とでは介護保険が優先されるため、要介護または要支援の認定の有無により、どの保険が対象となるかが決まります。
2018年度調剤報酬改定において、地域支援体制加算(旧基準薬局調剤加算に相当)の施設基準要件の1つとして、在宅薬剤管理の実績(年12回)が設定されるなど、地域包括ケアシステムの中での薬剤師の役割が期待されています。
在宅医療における薬剤師の役割としては、
- 患者の状態に応じた調剤(一包化、簡易懸濁、無菌調剤、麻薬など)
- 薬歴管理(相互作用、重複投与、副作用の確認など)
- 服薬状況・保管状況の確認、残薬管理
- 体調変化・副作用のモニタリング
- ケアマネージャー等の医療福祉関係者との連携・情報共有
などがあげられ、これらは、薬剤師以外の職種では担うことのできない、とても重要な役割ということができます。
薬剤師の在宅訪問業務が介護保険法の“理念”に沿うために
在宅医療において重要な役割を担っている薬剤師ですが、先述にある介護保険法の「保険給付は要介護状態または要支援状態の軽減または悪化の防止に資するよう行われるとともに…」という理念に対し、どのくらい沿った在宅訪問業務に取り組めているでしょうか?
それこそ介護保険報酬という側面のみを考えれば、在宅医療を続けてもらえることこそが、重要と考えられるわけですが、それで良いのでしょうか?
患者さん本人の意志とは関係なく、いわゆる“薬漬け”の状態で、意識も身体活動も自身らしくない状態で過ごしている方が少なくないように感じます。こうした状態が、QOLの低下を招き、更なる要介護状態の悪化、そして介護保険費増大の一端を担っている、という側面があるのではないでしょうか。
大分県や大分市の業者の取り組みに学び、介護保険法の理念に沿った在宅医療を目指していく――そんな取り組みができたら、薬剤師による在宅医療への貢献度は飛躍的に高まるのではないでしょうか。
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