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遠隔服薬指導解禁で求められる薬剤師の役割と仕事の変化

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。

 

各種報道で取り上げられているように、6月から、福岡市と愛知県、兵庫県養父市の一部で特区に基づく遠隔服薬指導が認められ、福岡市と愛知県の一部の薬局でオンラインの服薬指導が始まりました。

現在は、3地域の特区でのみ試験的に認可されているオンライン服薬指導ですが、有用性や改善すべき課題が確認されれば、全国に拡大されていく、と考えられます。

 

オンライン服薬指導によって、薬剤師にどんな役割が求められているのか、を考えてみたいと思います。

「考えないとできない」仕事が求められる時代へ

オンライン服薬指導では、PCやタブレット、スマホなどをIT機器を用いて、患者さんとコミュニケーションを取ることになります。オンライン・コミュニケーションに限らず、近年進歩が目覚ましいIT技術やAI技術は、僕たち薬剤師の業務の補助をしてくれるようになりつつあります。調剤監査システムや、自動計数システムなどはその最たるものでしょう。

 

この先、オンラインで処方箋が届き、自動的に薬が払い出される、というシステムが導入されるのも目と鼻の先の未来と言っても過言ではないと思います。

近年、薬剤師の業務は「モノからヒトへ」シフトする、と言われていますが、まさしくそのことが具現化しつつある、ということです。僕たち薬剤師の仕事は「考えなくてもできる仕事」から「考えないとできない仕事」へと変化しつつある、ということです

オンライン服薬指導で仕事はどう変化するのか

オンライン服薬指導では、薬剤師が直接患者さんのお宅を訪問しなくても済むようになります。例えば、片道30分のお宅であれば、合計1時間をその他の仕事に費やすことができるようになるわけです。これは、とても大きなアドバンテージです。もし、残業が多く発生している薬局であれば、その1時間分の残業を減らすことができます。

また、前述したように、ITやAIの発達により今後、薬剤師には「考えないとできない仕事」が求められるようになります。もちろん「考える」対象として、最も大切にしなければならないのは、患者さんの健康です。そうしたには、この患者さんにとって、なぜこの治療が必要なのか、を知る必要があります。また、処方監査や禁忌疾病などの確認も重要です。そのためには、患者の主治医やその他のコメディカルスタッフと密な連携をとっていく必要があります

オンライン服薬指導に対応していくことで、そうした患者さんのことを考える準備のための時間が取れるようになってくる、と考えられるのではないでしょうか

患者さんのことを考えるために

患者さんのことを考えて仕事をするためには、医師やコメディカル、介護スタッフから患者さんの情報を得て、同時に、薬学的観点から患者さんの情報をフィードバックする、という多方面への双方向のコミュニケーションが必要になります。また、それらを含めた的確な服薬指導を患者さんに行う必要があります。

さらに、オンライン服薬指導だけでは完結しないもの、例えば、吸入薬の指導や貼付剤のスキンケアなど、実際に患者さんと直に接しながら行わなければならない指導をしっかりと見極めて、必要に応じて従来の在宅訪問に一時的に切り替える、など、臨機応変な対応が求められるでしょう。

薬剤師による観点で、患者さんの状態を的確に判断し、患者さんのことを第一に考えていく――これまでも十分行われてきたことではありますが、オンライン服薬指導が始まった今、そうした取組を再度、足元から見直して、さらにブラッシュアップしていくことが求められているのではないでしょうか。

この記事を執筆した人
パワーファーマシー
中央薬局 今泉店
薬剤師
船見正範
薬学部を卒業後、製薬企業の品質管理部門を経て、調剤薬局に転職。
社内のDI活動や、薬歴スキルアップ活動などを担当。地域の高齢者の薬物治療の適正化に役立ちたいと、高齢者薬物治療やEBMについて学び、その成果を学術大会などで発表を続けてきた。
現在は、地域の薬剤師仲間と、EBMや処方提案についての勉強会も主催している。
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