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この度、こちらのHOP!薬剤師でコラムを担当させていただくことになりました船見と申します。
栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めています。
こちらのコラムでは、普段の保険薬局での業務を通じて感じたことや、薬剤師としての取り組み方などをお話させていただければと思います。
皆さんどうぞよろしくお願いいたします。
※当サイトは口コミの一部を掲載しています。
この記事の目次
1.薬剤師は“嫌われないように”働いている?
さて、薬局薬剤師の皆さんは、普段どんなことを心がけて、調剤や患者さんへの応対をしているでしょうか。「調剤ミスをしないように」「患者さんをお待たせしないように」「患者さんの悩みを聞き取れるように」「薬歴をしっかり書けるように」など、様々なことに気を配っていると思います。
中でも、「患者さんをお待たせしない」「患者さんにイヤな思いをさせない」という点を心がけている方は多いのではないでしょうか。
また、経営者や管理者などから、「患者さんから選んでいただける薬局・薬剤師になるように」「患者さんやご家族から喜んでいただけるように」ということを伝えられている方も少なくないのではないでしょうか。 患者さんに気を配り、処方医との関係を良好に保ち、経営者・管理者、同僚とのコミュニケーションに気を遣う……。薬剤師は日頃、“嫌われないように”働いている、と言えるのかもしれません。
2.アドラーの「嫌われる勇気」とは?
2013年に発売された、「嫌われる勇気」(岸見 一郎/古賀 史健、ダイヤモンド社)という本が大ブームとなりました。お読みになった方も多いのではないでしょうか。
この本は、心理学者アルフレッド・アドラーの思想をわかりやすく解説した本なのですが、「嫌われる勇気」というセンセーショナルなタイトルとは裏腹に、内容は「他人に認められたいという気持ち(承認欲求)」が自由を奪っている。
他人に貢献をする行為(他者貢献)が幸福を得る方法である」というアドラーの考え方を展開しています。(SNSの「いいね!疲れ」などは、その典型ですね!)
「褒められる」「感謝される」「評価してもらえる」というのは、とても心地よく、また幸せなことです。ところが、そのことが続くと、「褒められなかった」「評価してもらえなかった」ということがマイナスの評価として感じ始め、ついには「嫌な思いをさせたくない」「嫌われたくない」と、自分自身を(時には、自分の大切な仲間も)縛ってしまうことに繋がってしまう場合があります。先の本では、この束縛から逃れるために「嫌われる勇気」を提唱しているのですね。
3.“嫌われたくない”がミスを生む?
日常生活だけであれば、それは個人の問題です。しかし、業務で、そのような“縛り”を感じてしまっていたら…。特に薬剤師という職業においては、患者さんの健康に不利益をもたらしてしまう可能性があります。
薬局のインシデント(調剤ミスなど)の事例を見ていると、「忙しくて、チェックを怠ってしまった」という事例をよく目にすると思います。「患者さんを待たせてはいけない」「患者さんを怒らせてしまうかもしれない」という“焦り”の気持ちが、調剤ミスにつながってしまうと考えられます。
冷静に考えれば、1~2分患者さんをお待たせさせるのと、調剤ミスで患者さんに間違えてお薬を渡してしまうのとでは、後者の方が、圧倒的に患者さんにとって不利益であることは明白です。 しかし、前述のように「嫌われたくない」という思いが先に立ち、どうしても“焦って”しまい、ミスにつながってしまうのだと思います。
4.“嫌われたくない”から間食もOK?
患者さんへの服薬指導、生活指導においても同様のことが言えると思います。先日、あるお笑い芸人が、睡眠薬を服薬してから車を運転して、大きな問題となったことは記憶に新しいところです。この例は極端であったとしても、眠気を催す風邪薬が処方された患者さんに対して「車を運転しないでください」と強く言うことが難しい場合があります。
また、「眠れないので、飲酒をしてから睡眠薬を飲むようにしている」と、相談された時、「それは絶対にやめてください」と話すと、患者さんから嫌な顔をされるケースもあるでしょう。さらに、糖尿病治療の患者さんから「つい間食をしてしまう」という話を聞いても、「間食は絶対ダメですよ」とはなかなか言えなかったりしているということがあると思います。
でも本当は、これらは患者さんを相対的にリスクに晒していることになってしまっているのではないでしょうか。
もし、風邪薬を飲んでから運転をして、事故を起こしてしまったら…。
もし、飲酒をしてから睡眠薬を服用し、呼吸抑制が起きてしまったら…。
もし、間食を続けて、糖尿病治療薬が増えてしまったら…。
困るのは患者さん自身ですが、それを止められなかった僕たち薬剤師も“嫌われる”だけでは済まないのではないのでしょうか。
5.患者さんのために少しだけ“嫌われる勇気”を!
アドラー心理学がもてはやされたことが表しているように、多くの人は「嫌われる勇気を持ちたい!」≒「日ごろ、嫌われないように行動をしてしまっている」のだと思います。そして、上でも述べた通り、薬剤師は特に“嫌われないように”仕事をしている職種の1つかもしれません。
しかし、その患者さんに“嫌われない”ための行動が、結果的に患者さんの治療に負の影響を与えていたとしたら――。それは「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」としては失格なのではないでしょうか。 患者さんに「薬を渡す」、そのほんの一瞬で、嫌な思いをさせたくない、ということが僕たち薬剤師の目的ではないはずです。風邪薬でも数日、生活習慣病であったとすれば数年、数十年単位で、患者さんは薬物治療とお付き合いされるのです。
患者さんが家に帰り、薬を飲み、患者さんの病状が少しでも良くなること、患者さんやご家族が安心して薬を飲み続けていただけるために、どうしたら良いのか、それを一緒に考えることが重要なのではないでしょうか。
1分、2分の監査の時間を惜しみ、調剤ミスをしてしまう。患者さんからの相談に、なかなか「ノー」と言えない…。
そんな時、この場にいる患者さんではなく、家に帰り薬を飲む時の患者さん、そして数ヶ月後の患者さんに思いを馳せ、「この場にいる患者さん」に対して、ほんの少しだけ「嫌われる薬剤師」になってみる勇気を持って、患者さんに接する必要があるのではないでしょうか。
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