薬剤師が物申す!2019年6月後半のニュース|投薬履歴 マイナンバーで確認 政府、カード普及促す 他

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7月に入り、梅雨空が続く中、少しずつ夏の暑さが始まりつつあります。

今年は手足口病が、全国的に流行しています。小児科の門前薬局で働くけちゃおも、今年はその多さを実感しています。

さて、薬剤師の目線からニュースの解説を行うこちらのコーナーですが、今回は「医療費」にスポットを当てて、それに関連する記事を3点ご紹介しています。医療費の抑制はなかなか解決しない問題ではありますが、薬剤師の役割も含めて、自分なりに意見を述べさせていただきます。

薬の廃棄ロス削減 スズケン、電子タグで危険薬管理

ニュース概要

医薬品卸のスズケンは、在庫管理システム「キュービックス」の販売を始めます。

危険薬や向精神薬に電子タグを取り付け、在庫や使用状況を適切に管理できるシステムで、自動発注や、使われなくなった医薬品の回収にも役立てることができます。

これにより、医薬品の廃棄ロスを抑えることが期待されています。現在、国内では500~600億円の残薬があるとされ、その削減が課題となっています。

利用料は月額となる予定で、スズケンは独自に開発を進めてきたこのシステムを、新たな成長事業と位置づけています。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/6/25

コメント

近年、医薬品の在庫ロスに関して目を向けられることが増えました。これまで以上に問題にされるようになった理由としては、増え続ける医療費の問題と、医療機関の利益率低下にあると思います。

ご存知の通り、医療費は年々増加していて、2017年度の医療費は42兆円を超え、2000年度からの17年間で12.8兆円も増えていることになります。今後も人口は減少していくものの、医療の高度化や2025年には超高齢化社会を迎えることを背景に医療費は増加を続け、2040年度には66兆7,000億円に達するといわれています。

医療費を抑えるために、制度の見直しなど様々な政策がとられていますが、現状として一番効果があるのは在庫ロスを無くすことであると思います

これまでは人が管理していたので期限切れに気づけなかったり、返品などを行う手間もかかってしまったため積極的に行っている医療機関も少なかったことが予想されます。記事でも医薬品のロスは年間500~600億円にのぼると紹介されていますが、自動で在庫管理、発注、返品まで行ってくれるキュービックシステムのような管理システムが普及していけば、廃棄ロスを減らす余地は十分にあるはずです。

また、利益率の低下という面は、調剤薬局で働く立場としては、特に実感するところです。

これまでの薬局は、あまり経営努力をしなくても、患者数さえ確保できれば利益が上げられる状態でした。しかし、近年の診療報酬改定によって、後発加算や地域体制加算など、加算を取るためには相応の経営努力が必要となりました。

利益が上がりづらくなると、目を向けられるのはコスト削減です。実際、私が勤める薬局でも、医薬品のロスをなくすために自動発注システムの構築や期限が近くなった際のマニュアルの整備など、会社をあげて取り組んでいます。これは薬局だけでなく病院でも同様の問題が起きていると思います。

さて、今回のキュービックシステムですが、冷所品の危険薬や向精神薬が対象となるため、大学病院など基幹病院での需要が特に見込まれます。

年間50万円程度の利用料がかかるため、むしろ基幹病院クラスの規模がなければ料金に見合うメリットは得られないかもしれません。

しかし、この記事を読んで私が一番感じたのは、このシステムが必要かどうか、ではなく医療機関で働く個々人が危機管理を持たなくてはならない、ということです。

使わなくなった薬が期限切れになってしまうのは「仕方のないこと」と、特に何も対応せず諦めてしまう人は多いはずです。実際私も、管理薬剤師になりたての頃は何も考えず廃棄処理をしていたこともあります。

経営者でもない限り、在庫切れを減らしたところで自分の給料が上がるわけでもないので、なかなか積極的に取り組めないのです。

医薬品のロスを減らすことは、会社の利益、ひいては医療費の抑制につながります。システムに頼るだけでなく、在庫管理に関して、もっと意識を高く取り組むべきだと実感しました。

かかりつけ医を定額制に 過剰な診療抑制 厚労省検討

ニュース概要

厚生労働省は、かかりつけ医を登録する制度の検討を始めました。

欧米に比べて日本は医療機関を受診する回数が多く、それが医療費にも影響しています。かかりつけ医が病気の早期発見を行い、大病院を受診する回数を減らすことで、医療費を抑制させる狙いがあります。

かかりつけ医を受診した際の診察料は月単位で定額とする予定で、かかりつけ以外の医療機関を受診した場合は患者の自己負担を上乗せすることも検討されています。しかし、診療所の経営を圧迫する懸念もあることなどから医師会の反発も強く、調整は難航が予想されています。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/6/25

コメント

日本医師会では、「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師」をかかりつけ医と定義しています。

しかし、病院には「機能強化加算」などのかかりつけを評価する加算はありましたが、「かかりつけ医」という制度として明確に決められたものはありませんでした。

そのため、患者さんも普段かかりつけにしている病院はあってもそれ以外の病院にも気軽にかかることができていました。

しかし、かかりつけ医の登録制度ができることで、そういった流れも変わっていくかもしれません

今回は、2016年から始まっている「かかりつけ薬剤師」の制度とも比較しながら、かかりつけ医制度の今後を考えてみたいと思います。

まず、かかりつけ医のメリットとしては、「気軽に相談がしやすくなること」があります。

かかりつけを持たずに様々な病院を渡り歩いている患者さんも多いですが、特定の医療機関を持つことで的確な診断が受けられますし、相談もしやすくなります。

また、より高度な検査が必要となった際に「専門医への紹介がスムーズになること」も、かかりつけ医を持つことのメリットになります。

逆にデメリットとして挙げられるのは、負担金の増加です。

定額制にして過剰な診療を防ぐとありますが、やはり負担が増えることに抵抗を感じる人は多いはずです。実際、かかりつけ薬剤師制度も、同様に負担金が増えることを嫌う人が多く、定着が進んでいません。

月に何度も診察する必要性のある患者さんでなければ、定額制を受け入れるのは難しいのではないでしょうか。

また、記事で気になったのは、「かかりつけ医がいる医療機関以外を受診する場合は、患者の自己負担を上乗せする」というものです。

確かにかかりつけを持つことは大切ですが、例えばかかりつけの医療機関が休診の場合やセカンドオピニオンを聞きたい場合など、他の医療機関にかかる可能性はゼロではありません。

「他の医療機関に行くな」と言われているようで、患者側としても良い制度と思えませんし、医療機関としても、かかりつけ医に登録してもらわないと患者離れが起きてしまうため、患者の奪い合いが起こる可能性があります。

もしかかりつけ医登録制度が始まったら、患者さんに受け入れられるのか。始まってみなければわかりませんが、私は難しいと思います。日本はこれまで「かかりつけをもつ」という文化がありませんでした

患者さんが自由に医療機関を選べるというメリットがある反面、必要以上に複数の医療機関にかかることで、医療費が増えてしまったともいえます。

欧州では定着しているかかりつけ医ですが、日本ではかかりつけ薬剤師が開始して3年経った今でもあまり普及していないように、かかりつけ医という制度ができたとしても、すぐに定着することはないと思われます。

また、私が定着しづらいと考えるのにはもう一つ理由があります。これは私がかかりつけ薬剤師を案内している時にも感じましたが、「患者さんに案内をする」というのは、いわば患者さんに対して営業をかける、ということだと思います。

MRのように営業職を経験している人は別ですが、医師や薬剤師といった専門職の人たちは、患者さんへの「営業」をした経験がほとんどなく、苦手だと思います。

その理由からも、患者さんに対して積極的に案内をする医師は少ないのではないでしょうか。

ここまでマイナス面ばかり書いてしまいましたが、かかりつけ医という存在自体は、今後重要度を増していくものだと思います。

医師会、患者双方に納得のいく着地となってほしいと思います。

年間医療費、福岡県は新潟県より17万円多く

ニュース概要

厚生労働省がまとめた「医療費の地域差分析」によると、2016年度の一人当たりの医療費は、都道府県別では福岡県が最も高く64.6万円で、最も低いのは新潟県で47.1万円でした。

上位10県のうち九州、中国、四国で9県を占めていて、西日本の医療費が高いのが特徴的です。

医療費に地域差が生じるのは様々な要因がありますが、中でも病床数と高齢者の受診率、入院日数の長さは特に影響が大きく、それらが高い地域が医療費も大きくなっています。

一方、医療費が低い地域は、医師が少なく、必要な医療が提供できていないところもありますが、健康増進に向け市町村が連携を取って結果を出している地域もあります。

例えば医療費が6番目に少ない長野県では、健康づくりの県民運動を進め、健康寿命や野菜摂取量は全国一位となっています。こういった取り組みも、医療費抑制のヒントとなります。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/6/15

コメント

医療費の地域差については、今回に限らず以前から指摘されてきました。

医療費トップの福岡県は最も低い新潟県の1.36倍であり、特に九州地方や四国地方などが高い西高東低の傾向にあります。

その理由は様々な要素があると思いますが、1つは入院費用です。入院費用は医療費の4~5割を占めるものですが、これが西日本では特に多いのです。

九州や四国では医師の数や病床数が多いのが特徴です。そのため、軽い症状でも入院を勧められることが多く、医療費の高騰を招いているのです。

ただ、この問題は一概に「医療費が高いのが問題で、低い県は優秀だ」と言えるものではないと思います。実際、医療費が低い都道府県の中には、医療機関が不足していて、満足に治療を受けられていない、という県もあります。

大事なのは、医療の質を保ちつつ、医療費を削減していくことです。

そのためには、医師不足を解消していくことも、1つの解決策だと思います。

医師の数は増えていますが、地域や診療科によっては明らかに不足しているところがあり、偏っている現状があります。

こうした現状を改善するために、海外の制度を参考にするのも良いと思います。例えばイギリスを見てみると、25年先の診療科ごとの需要を予測して、診療科ごとに定員を決めているそうです。

そうすることで、特定の診療科に医師が固まってしまうことを防げます。日本も格差是正のためには、そういった抜本的な改革が必要なのかなと感じます。

また、医療費に地域差があるという問題は以前から変わっていませんが、各県の医療費自体は年々増加しています。

医療費を削減するために、国の制度にも期待したいところですが、私たち現場の薬剤師にもできることはないのか、考えてみるべきでしょう。

有効な方法としては2つあって、1つは後発医薬品の推進、そしてもう一つは残薬の解消です。これらは地域に関係なく薬剤師が関われる部分で、薬剤師が果たす役割は非常に大きいと思います。

後発医薬品は最近では後発加算の基準も高くなり、案内している薬局が大半ですが、残薬に関しては積極的に取り組んでいる薬局もそう多くはないので、伸ばす余地はあるはずです。

医療費も年間数十兆と言われるとなかなか実感が沸きませんが、一人当たりに直すと「こんなにかかっているのか」と実感します。

この問題に対して薬剤師が関われるとなると微々たるものですが、この中の数千円でも、減らしていく提案ができればと思います。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は、

  • 在庫管理システムから見る、在庫ロス削減による医療費抑制
  • かかりつけ医制度のメリット、デメリット
  • 医療費の地域差から見る問題点と、医療費抑制のヒント

という、増加し続ける医療費問題に関する話題をピックアップしました。

金額が金額だけに、個人でどうにかできる問題ではないですが、だからといって何も取り組まないのではなく、普段から問題意識を持っておくことは大切だと感じました。

この記事を書いた人
薬剤師兼ライター
けちゃおさん
薬学部を卒業後証券会社に入社。その後、MRを経て調剤薬局の薬剤師として勤務。
現在は薬剤師として働くかたわら、ライターとして医療・薬剤師・キャリア等に関する記事を多数執筆。
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