薬剤師が物申す!8月後半のニュース|「皮膚保湿剤が査定された経験あり」は23% 他

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うだるような暑さから解放され、秋の近づきを肌で感じている「まりも」です。7月から始まりました、薬剤師関連のニュースの中でも特に気になったものをピックアップしてお伝えするこちらのコーナー。今回は8月後半に起きたニュースの中から選んだ、3つのニュースをご紹介。

さらに、ピックアップしたニュースに対して、薬剤師である私が読んで何を感じたのか、どのような意見を持ったのかを述べていきます。

OTC薬販売、法令順守の徹底を‐スイッチ評価会議受け通知

ニュース概要

今月1日に開かれた厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の議論を受けた対応として、日本薬剤師会は22日の定例会見で、濫用などの恐れがある医薬品の販売する際に当たり、改めて法令順守を徹底するよう求める通知を都道府県薬剤師会に発出したことを明らかにしました。

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薬+読 2018/8/27

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8月前半のニュースとしても取り上げたPPIの否決問題。適正使用のために確認が必要なお薬は原則として1人1個しか買えません。

しかし、とある覆面調査によると『「質問されずに購入できた」薬局が2016年度は36.6%に上った』との結果が出ています。

この数字を受け、OTC医薬品の販売体制に問題があるとされ、PPIのスイッチ化が見送られてしまいました。

PPIの否決に関しては多くの薬剤師が関心を示しており、さまざまな声が挙がったのは言うまでもありません。主な意見をいくつか取り上げてみましょう。

  • 「要指導医薬品や第一類医薬品ではないお薬の数字を出して、薬剤師の指導がなっていないと言うのはどうなのか」
  • 「薬剤師の販売体勢に不備があるような書き方をされているが、要指導医薬品や第一類医薬品の確認についてはしっかり行われている」
  • 「薬剤師の能力ではなく、薬局の販売体勢の不備を理由にするのはどうなのか」

PPIの否決について知った薬剤師の多くは、口をそろえてこのようなことを発言しています。私自身もニュースを読んで同じようなことを感じました。

PPIがスイッチ化されたとして、それを売れるのは間違いなく薬剤師だけ。つまり、PPIの販売に他の一般従事者や登録販売者は関係ありません。

れなのになぜ、薬剤師以外も販売できる医薬品の数字をつまみ上げて、あたかも薬剤師の販売の仕方が悪いかのようにしてしまったのでしょうか。

厚生労働省が発表した医薬品販売制度実態把握調査によりますと、要指導医薬品購入の際に 「薬剤師により情報提供が行われた」割合は96.3%。第一類医薬品購入の際に「薬剤師により相談への対応が行われた」割合は90.1 %と、いずれも90%を超えています。

販売時の対応が100%ではないのは確かに事実です。しかし、このような要指導医薬品や第一類医薬品の販売時の数字を見ずに、確認のいるお薬を質問されずに複数個買えた36.6%という数字に着眼するのは話が違うのではと思わずにいられません

こちらのニュースには

  • 医薬品の販売体勢がPPIスイッチの妨げになっている
  • 薬剤師が薬剤師の仕事をしっかりやっているのかが問われている

といった旨の記載があります。しかし、上記の数字を見る限りは販売体勢の不備はなにも薬剤師だけの責任ではないように思えます。

薬剤師しか売れない医薬品で確認がなかったのは10人に1人、一方で薬剤師だけじゃなく登録販売者でも売れる医薬品で確認がなかったのは3人に1人。

「薬剤師が薬剤師の仕事をしっかりやっているのか」ではなく、OTC医薬品の販売体勢そのものを改善していく必要があるのではと私は感じます。

「皮膚保湿剤が査定された経験あり」は23%

ニュース概要

2018年4月の診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会(中医協)の議論の中で、医療用保湿剤であるヘパリン類似物質外用薬(ヒルドイドなど)について、美容目的での使用が増加している可能性があることが問題となりました。

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日経メディカル 2018/8/27

コメント

「ヒルドイドは究極のアンチエイジングクリームだ」と美容系の情報誌やネット上で話題となり、医薬品業界をざわつかせていることは多くの方が知っているでしょう。

疾病や負傷に対して使うはずの国民健康保険を利用して美容のためにヒルドイドを手に入れる。これはれっきとした法律違反。

しかも、疾病や負傷ではなく美容のために保険を使うことで、医療費も圧迫してしまいます。法律違反であること、医療費の圧迫につながってしまうことを受けてヒルドイドの処方に制限をかけるかどうかが議論されているのです

いつまでもきれいでいたい女性の気持ちは確かに分かります。ヒルドイドに含まれているヘパリン類似物質の保湿効果のすごさも分かっています。

しかし、自分の美のことしか考えずに間違った方法でお薬を手に入れるのがどうなのでしょうか。ヒルドイドが美容目的で処方されることが増えてから、こんな声を私は耳にしたことがあります。

「私の子供はアトピーで乾燥がひどい。だからずっと前からヒルドイドを使ってきた。それなのに最近、病院でヒルドイドを複数個処方しないようにしたらしく、私はしょっちゅう子供のために病院に行かなければならない。本当に必要としている人に届かないので、美容目的で貰っている人は本当にやめてほしい

子供の治療のためにヒルドイドを使っている母親からの悲痛な声。病院に行っても1個しかヒルドイドを貰えないのでお薬を切らしてしまうこともあるそう。

このような患者さんの生の声を聞くと一概にヒルドイドの処方数に制限をかけるのが正しいとは言い切れません。

「ステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬などアトピー性皮膚炎の治療と考えられる薬剤が同時処方されていない場合は保湿剤を保険適用から除外」という案もあるようですが、これでは本当にヒルドイドを必要としている方も保険が適用されない事態になりかねません。

主にネットで広まったヒルドイド。正しい情報も正しくない情報も瞬時に拡散してしまうネットでの発言は恐ろしいものであると同時に、現実世界でも大きな問題を生み出してしまう力を持っています。ヒルドイド問題はネットでの情報の発信の怖さを実感するものとなりました

それでも、どうしても美容を目的としてヒルドイドを欲しがる方はゼロにはならないでしょう。ヒルドイドが爆発的な人気を見せた影響で、ヘパリン類似物質を含んだ保湿剤を各メーカーが販売しています。

病院での待ち時間もなく、保険も使わずにドラッグストアに足を運ぶだけで簡単に買える市販薬の存在がもっと広まれば、このヒルドイド問題も少しは落ち着くのではと感じました。

タミフル、10代に投与再開‐異常行動に統一の注意喚起

ニュース概要

厚生労働省は21日、中外製薬の「タミフル」(一般名:オセルタミビル)など抗インフルエンザウイルス薬7品目について、添付文書の「使用上の注意」を改訂するよう製造販売業者に要請。

タミフルの警告欄から10代の使用差し控えの記載を削除し、投与を再開できるようになる。異常行動に対する注意喚起についても、整合性を図るため他の抗インフルエンザ薬と内容を統一した上で、重要な基本的注意の項に記載しました。

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薬+読 2018/8/24

コメント

以前、タミフルを飲んだ10代のインフルエンザ患者が、自宅マンションから転落死するという事故が起きました。

他に、同じくタミフル服用後の10代の患者が2階から転落するという事故も発生。これらの事故により2007年にタミフル服用後の異常行動について緊急安全性情報が出されたのを覚えていますでしょうか。

あれからもう10年以上経ちますが、ようやく警告欄から10代患者の原則使用差し控えの記載が削除されることになりました。

しかし、警告欄への記載がなくなったとしても、「タミフルを飲むと異常行動を起こすかもしれない」という概念はなかなか覆せないでしょう。

もともとタミフルと異常行動との因果関係は不明瞭なもの。タミフルを飲んだから異常行動が出たのか、それともインフルエンザ脳症の影響で出たのかは未だ分かりません。

関係性がはっきりしないまま、10代のインフルエンザ患者への投与が再開できるようになることは、子供を持つ親御さんからしたら、あまりに不安なことなのではないでしょうか。

私の周りにも「タミフルは子供に飲ませたくない」と言っている方が多いです。病気を治すために服用したお薬で命を落とすなんて、誰もしたくありません。

インフルエンザが流行する季節になると、おそらくタミフルが処方された患者さんへの服薬指導に頭を悩ませる薬剤師が出てくる可能性が高いでしょう。

  • 「どうすればタミフルを服用する患者さんを安心させられるのか」
  • 「タミフルを絶対に飲まなくてはならない理由はあるのか」
  • 「異常行動のリスクを取るならタミフルの服用を断る患者さんも出てくるのではないか」

10代のインフルエンザ患者への投与が再開によるこれからの動きにも注目です。

まとめ

8月後半のニュースの中から、今回は

  • OTC薬販売の法令順守の徹底
  • 皮膚保湿剤(ヒルドイド)の処方について
  • タミフルが10代に投与再開

これらの3つをピックアプし、私なりの考えや意見を述べていきました。みなさんはニュースを読んでどのように感じたでしょうか。OTC医薬品の販売方法、美容目的での医薬品の処方、因果関係のはっきりしない副作用。

どれも私たち薬剤師にとっては身近な話題と言えます。患者さんの健康を守る一端を担う薬剤師として、自分にできることを行っていきたいものです。

この記事を書いた人
薬剤師兼ライター
まりもさん
薬学部を卒業後、新卒でドラッグストアに就職。暗算が苦手なため調剤ではなくドラッグストアという道を選択。現在はライター業をメインに活動中。 ドラッグストアでの勤務経験を活かし、市販薬の説明記事や薬剤師の転職お悩みを解決する記事などを執筆を担当。
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