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薬剤師が最新ニュースに物申す!5分で読める2020年8月のニュース

こんにちは、けちゃおです。

新型コロナウイルス感染予防のための新しい生活様式に徐々に慣れてきたところで、8月は全国的に猛暑で熱中症にも気を付ける日が続きました。

今年は例年以上に健康に気を遣う夏になっていますね。

さて今回も、8月におきた薬剤師に関係するニュースを3つピックアップして解説しています。ぜひ読んでみてください。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

新型コロナウイルスの影響で悪化するパート薬剤師の雇用環境

ニュース概要

新型コロナウイルスの感染拡大により、パートや派遣薬剤師の雇用環境が急速に悪化しています。医療機関の外来患者の減少や処方の長期化により薬局の処方せん枚数も減り、シフトを大幅に減らされたというケースが増えているようです。日経DI Onlineが薬剤師向けに行った調査では、回答者に26.9%が非正規の雇用に「影響があった」と回答しています。

影響は求人にも及んでいて、パート薬剤師の求人数が減少し、時給も低下傾向にあるため、希望通りの働き方ができなくなってきています。

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DI online 2020/8/12

意見

コロナの影響で薬剤師の雇用環境が大幅に悪化しています。正社員として働いていると雇用に関してそこまで大きな影響を感じることはありませんが、パートや派遣として働いている薬剤師には大きな影響を与えているようです。今回は、調剤薬局のパート、派遣、正社員それぞれの雇用環境の現在と今後について考えてみたいと思います。

そもそも、薬剤師という仕事は本来はほとんど景気に左右されない業種です。どれだけ景気が悪くても病院に行くのを控えるということにはなりませんし、近年は医薬分業やドラッグストアの調剤併設化などからずっと売り手市場が続いていました。

それだけに、どの薬局も急激な環境の変化に対応しきれていないように思います。

パート薬剤師の現状

収益が悪化しコスト削減するとなったときに、まず対象となるのはパート薬剤師だと思います。正社員は勤務時間を確保しなければならず、派遣は契約期間中は一方的に切る事は難しい一方で、パートはシフトの時間を削ればいいからです。

記事でも、シフトを大幅に減らされたパートについて触れられています。ただこれは極端な例で、人員の大半がパートで回っているという薬局も多いので、そのような店舗ではシフトの影響も少ないのではないかと思います。

現状を見てみると患者数は徐々に戻ってきています。パートに関しては大幅に収益を落としている店舗を除き、雇用状況は回復していくのではないでしょうか。

派遣薬剤師の現状

数か月遅れで目が向けられるのは派遣薬剤師です。派遣は契約期間中は問題なく働くことが出来ますが、契約が切れたら更新されないという状況が増えています。もともと派遣は人手が不足しているときに高い時給で来てもらうという存在でしたので、処方せん枚数が減り人手が余っている今の状況では、最も必要のない存在となってしまっているのです。

今後の見通しを見ても、派遣はパート以上に厳しいと思います。というのも、今の不透明な状況が続く限りは、少し患者数が戻ったからと言ってすぐに派遣を雇い直すということは考えづらいからです。

実際に私が勤めている会社でも、処方せん枚数が大幅に減った店舗では派遣の人員を減らしている一方で、次の契約がなかなかもらえそうにないので暫くの間正社員で働こう、と考えて派遣から転職してきたという人も増えました。「好きな時間に、高時給で」働けるというのがこれまでの派遣薬剤師の魅力でしたが、その希望が叶わない今、なんらかのシフトチェンジは必要かと思います。

正社員の現状

一方で、正社員は派遣やパートほどは影響を受けていないのが現状です。ただ、これも職種によって様々です。ドラッグストアは売上が上がり臨時ボーナスが出たというニュースも耳にしましたが、病院や調剤薬局は患者減で経営が厳しくなり、ボーナスを減らされる等の待遇の悪化がみられるところもあるようです。今のところ正社員がリストラされたという話はほとんど聞きませんので、雇用の継続に関しては安心していいと思いますが、先行き不安なことには変わりありません。

正社員では特に問題なのは転職市場でしょうか。

厚生労働省によると、2020年5月の医師、薬剤師等の新規求人は、前年同月比で-31.2%と大幅に減少しました。(参照:厚生労働省)派遣薬剤師が次の職場が決まらずに苦労するのと同様に、正社員が転職しようと思ってもなかなか良い条件の転職先を見つけられないという状況になっているのです。

転職を考えている人は、良い求人を見つける努力をするということも大事ですが、良い求人がなければ無理に転職する必要もないかと思います。これをいい機会に今の会社でスキルアップをして、来年以降より良い条件で転職できるようにするといった方向でも考えてみてもいいかもしれません。

オンライン診療 不認可の向精神薬処方など88件

ニュース概要

このたび「オンライン診療の適切な実施に関する検討会」が厚生労働省で行われ、初診のオンライン診療は4~6月の3か月で2万件を超えたことが報告されました。また、その中で初診では認められていない向精神薬が処方されていたケースは88件あったとのことです。

オンライン診療は新型コロナウイルスが収束するまでの時限的な措置で行われていますが、感染が収束していないため3か月延長されることが決まりました。

意見

このコーナーでもたびたび取り上げている、オンライン診療の話題です。

記事によると、オンラインでの初診診療は3ヶ月で2万件を超えたとの事です。皆さんはこの数字を見て、多いと思いましたか?少ないと思いましたか?

私は、「思ったよりも少ない」という印象を受けました。というのも、今回の指針で示されている「初診」とは、初めてその病院を受診する人だけでなく、普段から通っている人でも新たな症状で受診する場合も含まれているからです。新規の患者だけで2万件ならば多いと思いますが、例えば普段血圧の薬をもらっている病院で、咳の薬を出してもらうのにオンライン診療を利用した、というようなケースも含めて考えてみると、件数としては少なく感じますし、もっと病院側が積極的に案内しても良いのではないかと思います。

また、この記事では「オンライン診療」とひとくくりにされていますが、実際には2万件の中には電話診療も含まれています。(参照:厚生労働省)通信機器を利用したオンライン診療に限れば初診で利用した人は約5600件と、まだまだその数は少ないという印象です。特例措置が延長されて、今後どれだけ利用者数を増やすことができるのか注目したいですね。

また、本記事にある「不認可の向精神薬が処方されていた」というケースは、まだ医療機関としても慣れていないところが多いという実情が見て取れます。ここで私が特に問題だなと思うのは、病院だけでなく調剤する薬局側もそのミスに気づけていないということだと思います。オンライン診療のように新しく始まる制度に関しては、病院側がミスをする可能性が高いということを十分に理解して、鑑査をする薬局でもミスが出ないような対策をあらかじめ取っておく必要があると思います。例えば対応マニュアル作成をする、全社員向けに講義を行うといった対策です。

政府は、今後医療のオンライン化に本腰を入れると報じられています。(参照:SankeiBiz)オンライン診療は対面よりも得られる情報量が限られるため、高度なヒアリング能力が求められることになります。仮にコロナが落ち着いたとしてもオンライン診療、オンライン服薬指導の流れは進んでいくことを考えると、対応に困らないための体制作りは各職場でしっかり行っておいた方がよさそうですね。

後発医薬品市場、再編圧力高まる

ニュース概要

2019年の日本の後発医薬品市場は、1兆274億円という調査結果が公表されました。現在は100社を超えるメーカーがあり、大手3社のシェアも3割程度しかありません。

今後は生き残りをかけた競争の激化と、市場再編が進んでいく可能性が高いとみられています。

ニュース本文を読む

日経 2020/8/5

意見

後発医薬品市場は、近年急速に拡大した市場の一つです。10年前の平成21年9月に35.8%だった後発医薬品の使用割合は昨年9月に76.7%となり、実にこの10年で2倍以上の成長をしたことになります。その結果、大小さまざまな後発医薬品メーカーが乱立し、医薬品の特許が切れるたびに10社以上のメーカーがジェネリック発売するという状況が続いています。

しかし、政府目標の80%にも近づき、今後は大幅な市場拡大は期待できなくなっていきます。そうなると、今後は限られた市場シェアを各社が取り合うということになっていきます。

その結果、この記事にあるように後発医薬品市場は再編が進むと考えられます。

私自身、MR時代にジェネリックメーカーの今後について考えたことがあります。当時、ジェネリックメーカーのMRをしている人とも話をする機会が多くありました。彼らの仕事内容は先発メーカーのMRとは営業スタイルが全く異なる点も多く、また個人の営業努力が実りにくいという印象を持っていました。

というのも、先発メーカーのMRは基本的に医師を相手にします。医師に自社製品の優位性を訴えて、処方につなげるのです。その場合、ライバルとなるのは類似薬効を示す別の先発医薬品です。類似していても、薬の効果や価格は異なりますので、そこが訴求ポイントとなります。

一方、後発メーカーが相手にするのは全く同成分の医薬品です。特許が切れた先発品や、他メーカーのジェネリック品がライバルとなります。医師が一般名で処方した医薬品に対して、「うちの医薬品で調剤してください」とお願いするのです。この場合、決定権は薬局にあることが多いので、ジェネリックメーカーのMRは病院よりも調剤薬局を回ることの方が多くなります。

この話を聞いたとき、私は「ジェネリックメーカーのMRはあまりやりがいがないな」と感じました。剤形などに違いがあるとはいえ、成分が同じであれば薬局からしたら「どのメーカーでも一緒でしょ」と思われることが大半だからです。また、件のMRは「大手のジェネリックメーカーでなければ仕事にならない」とも言っていました。それは、薬局からしたら「成分が同じであればできるだけ有名なメーカーのものを使いたい」と考えるからです。成分や価格で優位性が取れないので、中小のジェネリックメーカーは圧倒的に不利なのです。

私も調剤薬局で働く側ですが、ジェネリックを採用する際には「市場に多く流通している製品」を選ぶようにしています。在庫切れにならないようにするためには、その方が良いからです。また、会社全体として「この医薬品はこの後発メーカーの薬を使うように」と指示されることも多々あります。

近い将来、後発医薬品市場は飽和すると思いますが、現状を見る限り大手のジェネリックメーカー以外は淘汰されていく時代になっていくのではないかと思います。

まとめ

今回は、コロナウイルスによる雇用環境の変化と、オンライン診療、後発医薬品市場のそれぞれについて現状と今後の見通しを考えてみました。

雇用環境についてはまだまだ厳しい状況は続いていますが、今はまだ無理をせず、今の自分にとって一番よいキャリアを選択していただけたらと思います。

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