薬剤師が物申す!2019年7月前半のニュース|インドのAI医療に期待 他

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今年は、例年より遅い梅雨明けとなりました。梅雨が終わると一気に夏の暑さが来ていますね。

今年の夏は平年並みの気温とのことですが、熱中症にも気をつけて日々のお仕事がんばってください。さて今回は、7月前半に起きた医療業界のニュースを3点取り上げて、薬剤師の立場から解説していきます。

インドのAI医療に期待

ニュース概要

インドでは、スマートフォン診療が浸透してきています。

エムファインという会社は、アプリを用いて誰でもアクセスできる「クラウドクリニック」を開設しています。病状をアプリに入力すれば、対応可能な医師の一覧が表示され、ビデオや写真などを通じて診察を受けることができる、というものです。

病院の予約もできる他、AIを活用した病気予測まで行っており、医師が診断を下す際の手助けにもなっています。インドは人口10万人あたりの医師数が80人と日本の3分の1程度しかなく、病院のクオリティもばらつきがあります。都市部では交通渋滞も多く、気軽に病院を受診できない環境があります。

スマートフォン診療が、今後も医療サービスの向上に貢献していくものと思われます。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/7/10

コメント

スマホを使ったオンライン診療についてはたびたびこのコーナーでも取り上げてきましたが、今回は海外の医療について取り上げてみたいと思います。

インドなど後進国では、オンライン診療が普及してきているそうです。日本ではまだ承認されたばかりで普及はこれから、といったところですが、記事を読んでみると、その普及度の違いに驚かされます。

内容としては、自分の体調をアプリで入力すれば、対応可能な医師とビデオなどによりやり取りを行い、診断や処方せんの発行が行われるとのこと。

日本で始まったオンライン診療と基本的な流れは同じだと思いますが、日本では特定の医師とやり取りをするのに対して、インドでは対応可能な医師の一覧が表示され、その中から選んで診断を受けることができるそうです。

そういうところも、地域に限定されず広く普及される要因のひとつかも知れません。また、AIを活用して病気予測を行うなど、企業が参入して競争している中で技術も格段に上がっていると感じます

そもそも、オンライン診療といういわば先端技術が日本や欧米でなく東南アジアなどで率先して普及していることに驚きはあります。しかし、これは各国の背景を考えれば当然かもしれません。

まず、インドなどでは先進国に比べて医療に関する規制がゆるいという点があります。そのため、普及するのも早いですし、企業も参入しやすいため、技術の向上も早いのだと思います。

これが日本であったら、仮にこういった画期的なシステムが開発されたとしても、すぐに国を挙げて普及を促進させよう、とはならないと思います。現に、今の日本のオンライン診療は、離島、僻地などを除いて最初の1回は直接の対面診療が必要とされています。

かなり限定された状況でしか利用できないようになっていますので、現在のインドのように「誰でも」「いつでも」「複数の医師から選べる」ようになるには、かなり時間がかかるのではと予想されます。

また、先進国とではオンラインの必要性にも違いがあります。日本でも、オンライン診療は僻地など医療の提供が困難な地域で特に需要があるといわれています。

一方インドなど後進国では全体的に医師の数が少なく、僻地に限らず医療不足の現状があります。インドネシアなどの島国では、その問題はさらに顕著になるでしょう。オンライン診療に頼らず安定して満足のいく医療を受けることができると言うのは、それだけ日本の医療制度が優れている、と言い換えることもできます。

今後も医療サービスの向上に大きく関わっていくと思われますが、唯一問題点を挙げるとしたら、画面を通じての診察だけで正確な診断ができるのか、ということでしょうか。どのあたりの症状まで診断が可能なのか、また仮に診断ミスが起きてしまった時にどう対応するのか。簡単な風邪などの症状であれば大きなミスにつながることも少ないでしょうが、画像診断とビデオによる問診だけでは診断できる範囲も限界があります。

今後日本など先進国で同様のサービスを提供しようと思ったら、そのあたりは特に明確にしておく必要があるのではと思います。

薬剤師がネット上で服薬情報を管理

ニュース概要

調剤薬局大手の日本調剤は、通販サイトを刷新して新たに「日本調剤オンラインストア」を開設しました。

大衆薬を4割まで増やし、3千点近くまで増やす予定です。第一類医薬品も150種類を並べ、通販サイト専門の薬剤師も5人配置します。

また、日本調剤では処方薬の服薬履歴をスマートフォンで管理する電子お薬手帳を提供していますが、これにネット通販の購入履歴をひも付けして、一元管理できるようになります。

これにより、処方薬と大衆薬やサプリとの飲み合わせについても薬剤師が適切にチェックできるようになります。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/7/1

コメント

医薬品のネット通販は、今後さらなる拡大が期待される分野です。

大手ドラッグストアや楽天など各社が取り組んでいる分野ではありますが、調剤薬局が本格的に行っているケースは少ないかと思い注目してみました。今後、他の調剤薬局のモデルとなっていくかもしれません。

他社が薄利多売のビジネスモデルを展開しているのに対し、日本調剤は調剤薬局として安心、安全をアピールしていくとのことです。確かに、大量に仕入れ安く得る、薄利多売の大手通販サイトに対しては、調剤薬局の規模で安さで勝負しても勝ち目はないでしょう。

実際、日本調剤のオンラインストアと他社サイトで医薬品の価格を調べてみたところ、多くの医薬品は日本調剤のサイトの方が1~2割高くなっていました。ただ、その代わりに「薬剤師」という付加価値をつけることで、他社との差別かも図れる可能性があります。

特に、今回の記事で注目したいのは「電子お薬手帳と連携して、一元管理をする」という点です。

私も調剤薬局で働いていますが、「今市販薬を飲んでいるが、今回処方された薬との飲み合わせはどうなのか」といった問い合わせを受けることは多々あります。また、併用薬についてこちらから聞いても、病院で出された薬は教えてくれても市販薬まで細かく教えてくれるという患者さんはそれほど多くありません。

しかし、市販薬の中には処方薬と効果が類似しているものもありますし、併用に注意が必要なものもあります。もちろん薬剤師がヒアリングをしてすべてを把握しなければならないのですが、ネットで購入した市販薬についてまでお薬手帳で管理することができるようになれば、薬剤師としても管理がしやすくなりますので、非常に良いシステムだと思います。

日本調剤に限らず、例えば楽天など他のサイトで購入した市販薬までひも付けできるようになるなど、将来的に広く利用できるようになって欲しいと思います。個人情報の観点から難しいとは思いますが。

簡単な症状であればOTC薬を用いて自分で治療するという「セルフメディケーション」の考え方は、今後さらに普及していくものと思われます。しかし、ドラッグストアのように患者さんに対してOTC医薬品を案内できる状況であれば、セルフメディケーションに貢献ができますが、OTC医薬品を扱っていない調剤薬局ではそういった貢献はできないと思っていました。

医薬品のネット通販も、調剤薬局やドラッグストアには逆風と言われていますが、ネット通販の分野に調剤薬局として参入することで、調剤薬局の薬剤師がセルフメディケーションに触れるきっかけとなればいいと思います。私の会社でも化粧品などのネット通販を行っている部署があるため、今後関わりがあるかもと思いながら記事を読み進めました。日本調剤の今後に注目していきたいと思います。

市販薬あるのに病院処方5000億円 医療費膨張の一因

ニュース概要

処方薬から市販薬に変わった薬は「スイッチOTC薬」と呼ばれ、医療費抑制につながると期待されています。

しかし、市販薬で同じ成分の医薬品があるにも関わらず、病院で処方される医薬品の総額が5千億円を超えていることがわかり、市販薬の利用が進んでいない現状が浮かんでいます。

その理由は、病院で処方されたほうが自己負担が少なくて済むからです。湿布薬や保湿剤を中心に、不必要な受診が相次いでいます。

また、有効な市販薬が増えれば病院に来る人が減るため、医師側の反発もあり市販薬が承認される件数が少ないのも普及が進まない理由のひとつです。

後は、すべての医薬品を一律に保険適用するのは難しく、フランスのように薬の重要性に応じて自己負担率を段階的に変えるなどの見直しが必要になってきています。

ニュース本文を読む

日経新聞 2019/7/11

コメント

増え続ける医療費に対し、最近では様々な方向から対策が取られていますが、どれもいまひとつ目立った効果が見られていない状況が続いています。その中のひとつが、市販薬の利用です。

医療用医薬品の中で市販薬で代替できるものは5,000億円を超えるとのことで、医療費の総額42兆円から見ると実に1.3%にもなる計算です。

その理由として、「自己負担が軽いから」という理由が挙げられています。確かに、特に値段の高い医薬品では差額も大きくなるため、多少面倒でも病院にかかって処方せんを出してもらう、という人は多いと思います。

不必要な受診で近年社会問題となった例としてはヒルドイドがあります。本来必要のない人が美容目的のためにヒルドイドを大量に処方してもらう、というケースが頻発して、処方適用から外すべきとの意見が出るほどの問題となりました。

このように、本来必要でなくても、保険適用されることを「オトク」と考えて病院にかかる、というケースは多いと思います。しかし、こういったケースは美容目的で病院にかかる患者側も問題ですが、それを良しとして処方している医師側にも問題があるとおもいます。

また、それ以外にも「医師からもらったほうが安心できるから」という理由も大きく関係していると思います。

確かに、スイッチOTCとして医療用医薬品と同成分のものがドラッグストア等で購入できるようになってきています。しかし、私が患者さんに話を聞いていても、「病院で薬をもらったほうが安心できる」「その方が効く気がする」といったイメージを持っている人が非常に多いと感じます。医療機関がそれだけ信頼されているのはありがたいことではありますが、このイメージを変えていかない限り、市販薬への切り替えはなかなか進まないのではないかと思います。

患者さんがそのようなイメージを持ってしまうのは、患者さん自身の知識不足にも原因があると思います。セルフメディケーションという言葉ができ、市販薬を使っていくことが推奨されていますが、その言葉もなかなか浸透していきません。市販薬の使用拡大のために患者さんに対して適切なアドバイスを行うのは、薬剤師であるべきで、今の現状に薬剤師として責任を感じるべきです。

調剤薬局で働いていると、なかなか市販薬を勧めることはありません。むしろ、市販薬を使ってしまうと患者さんが薬局に来なくなってしまうことになりますので、それを恐れてそういった話は意図的に避けている薬剤師もいます。そのような体質も変えていかないといけないと感じます。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は、

  • インドにおけるスマートフォン診療の現状
  • 日本調剤の医薬品ネット販売について
  • 浸透しない市販薬の利用

の3つについて解説を行いました。

特に1つ目の記事に関しては、オンライン診療のニュースはよく目にするようになりましたが海外の現状についてはなかなか目にする機会がありませんでしたので、勉強になりました。海外と比較をすることで、日本の課題も見えたように思います。

この記事を書いた人
薬剤師兼ライター
けちゃおさん
薬学部を卒業後証券会社に入社。その後、MRを経て調剤薬局の薬剤師として勤務。
現在は薬剤師として働くかたわら、ライターとして医療・薬剤師・キャリア等に関する記事を多数執筆。
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