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患者が抱える問題を薬剤師としてどう解決できるのか?ファミリー薬局が目指す理想の姿

神奈川県横浜市にある「ファミリー薬局横浜神大寺店」は、訪問服薬指導やセルフメディケーションに力を入れています。

「患者さんの生活環境や食生活を把握して、ストレスのない提案をしていきたい」と語るのは、同薬局長の池田裕紀(いけだ・ひろとし)さん。

かかりつけ薬局や在宅医療など地域に根ざした薬局が増えている昨今、これからの薬局や薬剤師に必要なこととは一体なんのでしょうか?

 

話を伺った人:池田裕紀(いけだ・ひろとし)さん

株式会社FAMILY PHARMACY代表。中性脂肪やコレステロール値、血液中のブドウ糖濃度などを調べられる検体測定も取り入れ、患者さんの生活に無理のない服薬指導を大切にしている。測定時間は短いもので1分300円〜とリーズナブルな価格で受けられ、その場で検査結果が分かる。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

服薬指導をするだけではだめ?これからの薬剤師に必要なこととは?

薬剤師さんインタビュー

ーー早速ですが、池田さんが薬剤師を志したキッカケを教えてください。

池田さん:祖父母や両親の影響が大きいですね。私は、1951年から続く祖父母が下町に開局した薬局で幼少時代を過ごしました。居間から出るとすぐ目の前にはレジがあり、店内の棚には薬や日用品が並べられ、角には畳4畳ほどの調剤室が有ったのを覚えています。

ーー薬局が身近な存在だった池田さんにとって、薬剤師という選択はごく自然な流れだったんですね。

池田さん:そうですね。近所の方が薬や日用品を買いに来たり、地域に根ざした薬局であると同時に、それが自分たちの生活の場でもありました。

ーー最近は、在宅医療に力を入れる薬局や健康サポート薬局といった、地域密着型を目指す薬局が年々増えていますよね。

池田さん:そうですね。医薬分業が一般的になり今後は、調剤だけでなく在宅医療やセルフメディケーションの推進といった、より専門性の高い業務を行っていく必要があると思います。

患者さんが1日に何回も薬を飲むこと自体に無理がある?

薬剤師の池田さん

池田さん:地域の方々が自然に集まる、昔ながらの相談薬局をカタチにできたらと思い、当薬局では訪問服薬指導や栄養相談にも力を入れていこうと思っています。

カウンター越しに薬を渡してそこで終わりではなく、薬剤師が患者さん一人ひとりの自宅での経過や生活環境を把握していることによって、より安心できる医療サービスが提供できると思うんです。

ーー複数の薬を服用する高齢世代のなかには、飲み忘れや自己判断で飲まないといったケースも起こりうると聞いたことがあります。訪問服薬指導によって、薬の服用における問題点も改善できるのでしょうか?

池田さん:在宅では薬の管理や服薬カレンダーの使用、介護者の協力などで改善は見込めるケースは多くあります。飲み忘れに関しては非常に難しい問題ではありますが、薬を飲み忘れてしまうのは自然なことだとも思うんです。

ーーと言いますと?

池田さん:高齢者が「食前」「食後」「寝る前」と1日に何回も薬を飲むこと自体に無理があるように思います。もちろん、なぜその薬を飲む必要があるのかを説明し、しっかり薬を飲んでいただくことが我々薬剤師の役目であると思っています。

患者さんの1日の生活リズムや食事の回数、介護などを把握して、どういったタイミングであれば無理なく薬を服用できるのかを、医師に提案していくことも薬剤師として大切なことです。

自宅での生活を継続することだが、在宅治療の大きな目的のひとつだと思っています。だからこそ、患者さんにとって無理のない生活を一緒に考えていく必要があります。

それぞれの職種が専門性を発揮しながら医療現場の問題をクリアしていきたい

薬剤師の医療現場

ーー2025年には75歳以上の高齢者が2,200万人にものぼり、超高齢社会が到来するだろうと言われていますよね。そうなると、少子高齢化がさらに加速して訪問服薬指導の需要も増えていくのでしょうか?

池田さん:自宅でのターミナルケアも増えていますし、高齢者人口がピークに達する2040年頃まで訪問服薬指導の需要はさらに高まっていくと思います。人口動態を考えると、2025年頃から一気に加速していくのではないでしょうか。

高齢化社会の波が押し寄せたとき、薬局から絶えず薬を供給し続けなければ、患者さんの元に薬が届かないという状況に陥る可能性があると思います。

ーーそれまでに薬局は、今のクオリティを保ちつつ、体制を整えていかなければならないと。

池田さん:はい。薬局としての体制もそうですが、訪問薬剤師も含めて地域としての体制を整えていくことが大切だと思っています。

ーー地域としての体制ですか?

池田さん:患者さんを中心に、ケアマネージャー、ドクター、ナース、PT、OT、ST、管理栄養士、薬剤師などそれぞれの職種が専門性を発揮しながら、課題をクリアしていけば良いのではないかなと思います。

なので私は、訪問服薬指導をおこなう際、その患者さんの生活環境やキーパーソン、介護に関わる関連職種の方からの情報を把握するように努めています。在宅は、介護保険を利用されている方がほとんどです。

ケアマネージャーさんにケアプランを見せていただき、どのような課題があり薬剤師としてどのように介入していくのが一番いいのか、患者さんにとってメリットがあるのかを考えながら、業務にあたるようにしています。

ーー薬剤師の職務に捉われるのではなく、チームで連携を図ることでより質の高い医療サービスが実現できますね。

池田さん:そうですね。お互いを尊敬し合う気持ちが、より質の高い医療サービスやケアを生むのだと信じています。

私は薬剤師という仕事は自分にとって天職だと思っていますし、訪問服薬指導はもちろん、検体測定や栄養相談など新しいことを提供できる環境をどんどん切り開いていきたいですね。

まとめ

薬剤師の訪問服薬指導

池田さんは最後、「患者さんやそのご家族からの『ありがとう』という言葉が原動力になる」と話してくれました。

超高齢化社会が加速するであろうこれからの時代に合わせて、訪問服薬指導など地域に根付いた医療サービスが、これからの薬局しかり、薬剤師しかり、患者さんから求められる姿なのではないでしょうか。

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