12回転職してわかった「会社と個人は離れられる」という哲学

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12回もの転職を経て、経済評論家として活躍する山崎元さん。転職歴を「7勝4敗1分け」と振り返る彼は、「会社と個人は本来対等であり、お互い離れることができる」という。

山崎さんの考える「転職の決め手」とはそして、転職のメリット・デメリットとは。

転職に悩めるすべての人に送る、山崎さんの「転職哲学」を紹介する。

▼転職には3種類ある

ーまず、こちらが山崎さんの12回の転職歴です。

山崎 人よりはずいぶん多く転職をしていますね。整理すると、私のなかで転職は大きく3種類に分けられます。

まずは「自分のレベルアップのための転職」。もっとレベルが高い仕事をしたい、やりたい仕事と今の仕事がずれているという理由のもので、20代に多いですね。

次に、「キャリアアップのための転職」。覚えた仕事をより大きな場所で使いたいというもので、30代の転職によくあります。

そして、「ライフスタイルを変えるための転職」。家族と過ごす時間を増やしたい、将来のために別の経験を積んでおきたい、というようなものです。

ー 山崎さんの最初の転職は、「レベルアップのため」だったんでしょうか。

山崎 そうですね、新卒で商社に入ったのですが、ファンドマネージャーという仕事に挑戦したいというのが転職を決めた最大の理由でした。

ただ、最初の転職というのは、とても悩みましたよ。2回目以降とは別物です。ただでさえ初めてのことで不安ばかりな上、当時の1985年は、まだ転職が一般的ではないころ。会社を辞めて外に出る具体的なイメージが持てませんでした。

ー 最後はどのようにして決断したのですか。

山崎 「とりあえず、やってみよう」という割り切りです。結局、働いてみないと次の会社が正解かどうかはわかりませんから。 初めての転職は、すごく悩むものだと思います。ですが、働く気力と健康があれば、なんとかなる、というのが結論ですね。

▼転職歴の評価は「7勝4敗1分け」

山崎 今までの転職を振り返ってみて、自分としての評価は「7勝4敗1分け」です。転職したことでより大きな仕事にチャレンジできたり、経済的な条件が向上したものは「勝ち」。新しい仕事がつまらなかったり、職場の雰囲気が合わなかった場合は「負け」ですね。

ー 回数を重ねて、転職に対する感覚の変化はありましたか

山崎 会社との「距離感」のようなものが体得できて、2回目以降は割とスムーズに決断できるようになっていきました。

ー「距離感」ですか。

山崎 つまり、「会社と個人は本来対等であり、お互い離れることができる」という感覚ですね。全ての転職が必ずプラスになるとは言いません。ただ、最優先すべきは「個人の自由」であり、会社の都合よりも優先されるべきものだと考えます。  つまり、「今いる会社ではやりたい仕事ができない」「勤務や給与の条件が合わない」という場合は、転職という選択肢があってよい。

ー 転職は自分の人生を自分で作っていくための手段である、ということですね。

山崎 自分というものを「自分の仕事」を販売する会社個人商店のような存在だと考えてみるといいと思います。その場合、勤務先の会社は「自分の仕事」を継続的に買ってくれる「取引先」になります。取引先の条件が悪ければ、商売なら取引先を変えることを考えますよね。転職とは、「主な取引先の変更」なのです。

すると、「山崎個人商店」の「商品」はなにか、つまり、他の店にはない「売り」は何か、と考えますよね。それがビジネスパーソンとしての自分の価値にもなります。新たな商品を増やすための取引先の変更転職ということもありえるわけです。

▼「どんな仕事ができるか」で、次の職場を決める

ー転職というのは、仕事内容や待遇など要素がさまざまで、何を決め手にすればよいのか迷いがちだと思います。山崎さんが「ここだけは押さえておけ」と思うポイントはありますか

山崎 「次の職場で、どんな仕事ができるのか」をはっきりさせたほうがいいと思います。

お互いのミスマッチを防ぐという理由もありますが、一番重要な「自分のキャリア」をどう作っていくか、ということに繋がります。

先ほどの個人商店の例えを出すと、「ファンドマネージャー」という商品を売っていたのに、いきなり「営業」という商品を扱うようになったのでは、何の店かわからなくなってしまう。すると、人材市場での「山崎元の人材価値」の価値が下がってしまうのです。  だから、自分のやりたい仕事を明確にした上で、その仕事ができる保証がある会社へ行くべきです。

ーなるほど…。

山崎 漠然と転職して、向こうの会社の都合で与えられた仕事をして…ということでは、自分の価値は上がりません。

逆に、自分の中に一貫した仕事の軸があれば、もし転職先の会社が合わなかった場合でも、次の転職活動の際、納得してもらえる理由になりますよね。 まずは、「何のための転職なのか」を整理してみるのがいいでしょう。そうすれば、優先すべき事項も決まってくるはずです。

▼転職のデメリットとは

ーここで山崎さんに、12回転職したからこそのお話を聞いてみたくて。著書の中で、「転職のコスト」について書かれていましたね。

山崎 私は会社の近くに住みたい人間なので、転職するたびに引っ越ししています。なので、毎回の敷金・礼金や運送屋へ払った金額を考えると、相当なコストです。  ボーナスや企業年金も、かなりもらい損ねていますね。もし、最初の会社に勤め続けていれば老後は安泰だったかな、と思うことはあります。

ー 転職者ならではの悩みですね笑。

山崎 ただ、最も本質的なデメリットだと考えるのは、精神的な副作用です。それは、転職しようと考えると、今の会社から気持ちが離れてしまうということです。

ー目の前の仕事に100%で取り組めなくなってしまう…。

山崎 転職を考えるということは、現状の会社に不満があるわけです。そこで転職活動を始め、次の会社が現実的になってくると、気持ちはどうしても変化してきますよね。 ですから、転職活動をだらだらと続けるのは自分にとっても、会社にとっても、あまりいいことではないでしょう。

ー転職を考えている時に、誰かに相談するケースもあると思うんです。その場合、相手として適任なのはどんな人でしょうか。

山崎 現状の会社の同僚はおすすめしません。自分が辞めることで何らかの影響が及ぶ相手ですから、客観的なアドバイスを得ることは難しい。結局転職しないことになった時も気まずいですね。

適任なのは、業界の状況を客観的にみられている、同業他社で数歳上の人でしょう。

ーなるほど。同業他社の横のつながりは、転職するしないに関わらず、持っておいた方がいいですね。「数歳上」というのは…

山崎 年配の人の話は、事後的に美化されていることが多いです。さらに、役職が上がって人を使う立場になると、部下に逃げられると困りますよね笑。だから、転職についてネガティブに言いがちになるので、年上すぎないほうがいいでしょう。

▼転職には快感がある

ー現在の山崎さんは、どのような働き方なんでしょうか。

山崎 今は会社員と経済評論家、自分の会社の3足のわらじを履いています。40代前半に、リスクを小さくするために、収入源を分散することを考えたんです。自分の年棒を落とす代わりに自由度をもらう契約を会社と結んで、徐々に働き方を変えていきました。昔に比べて、ずいぶん働き方が多様になってきた印象は受けますね。

ー山崎さんが初めて転職された80年代と比べて、世間の転職に対する見方もかなりポジティブになったのではないでしょうか。

山崎 はい、世の中に転職を経験した人が圧倒的に増えましたよね。会社の側も、社員に辞められることに慣れてきたと思います。

昔は「転職は逃げ」なんていう人もいましたが、私は「逃げられることは幸せだ」と思いますよ。世の中を見回してみると、転職する人はたくさんいるし、みんななんとかやっています。だから「転職して大丈夫かな」と心配しすぎなくていいと思いますよ。

ー考えすぎるより、まず動いた方がいいと。

山崎 今あるものは、どうしても過大に評価してしまいがちです。今の状態と次の状態が同等に見えれば、次の方がいい可能性が高い。人生の時間には限りがありますから、いつまでも悩んで時間を無駄にするのはもったいない。

一度転職を経験すると、人生のリスクというものを認識でき、不確実なことに強くなります。それに何より、自分で進路を選び取った快感があるのです。もちろん、一つの会社に勤め上げることも正しいと思います。ただ、転職のある人生も悪くないですよ、といいたいですね。

山崎さんプロフィール

1958年北海道生まれ。経済評論家。81年東京大学経済学部卒業後、三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員。投資と投資教育のコンサルタント会社、マイベンチマーク代表取締役も務める。

イラスト:藤田マサトシ、取材・文:友光だんご、編集:Huuuu

☆新刊紹介☆

山崎さんの新刊が好評発売中

『一生、同じ会社で働きますか』文響社刊 1,420円(税抜) 280ページ

社会的に転職が一般化する中、ビジネスパーソンはどのようなマインドを持ち、人生設計を描けばよいかを伝える一冊。転職した際の振る舞い方やビジネスの心得など、きれいごとだけでなく、実際に転職に直面した際に役立つ実用的な内容となっている。

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