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派遣で働くSEの単価・年収事情
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バブル崩壊以来のデフレ経済は、当然SE派遣単価にも影響し、約20年間ほとんど変化がありませんでした。
しかし、昨今の人手不足に加え、IT業界の活況によりここに来てはっきりと上昇しています。派遣で働くSEの皆さんにも追い風が吹いていますので、最近の派遣単価や年収事情をまとめてみました。
※当サイトは口コミの一部を掲載しています。
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この記事の目次
業種別派遣単価比較
まず、SE派遣の単価や時給が派遣業務の中でどのあたりに位置するかを知るために厚生労働省の「平成27年度 労働者派遣事業報告書の集計結果」から派遣単価と時給を抜粋したデータを示します。
集計結果は8時間単価ですので、わかりやすく時間単価に変換し高単価順に並べています。また、旧政令26業種のうち理解しやすい業種16種類を抜粋しています。また、旧一般登録型派遣を「有期雇用」、特定派遣を「無期雇用」と表記しています。
有期雇用派遣の業種別派遣単価比較
業種(旧26業種から抜粋) | 時間単価 | 平均比% |
---|---|---|
ソフトウェア開発(SE含む | 3,227円 | 155% |
事業の体制企画、立案 | 2,959円 | 142% |
機械設計 | 2,856円 | 137% |
デモンストレーション | 2,685円 | 129% |
研究開発 | 2,485円 | 119% |
通訳、翻訳、速記 | 2,434円 | 117% |
OAインストラクション | 2,335円 | 112% |
書籍等の制作・編集 | 2,262円 | 109% |
建築設備運転、点検、整備 | 2,242円 | 108% |
インテリアコーディネータ | 2,141円 | 103% |
広告デザイン | 2,122円 | 102% |
全体平均 | 2,081円 | 100% |
取引文書作成 | 2,076円 | 100% |
事務用機器操作 | 1,931円 | 93% |
アナウンサー | 1,964円 | 94% |
受付・案内 | 1,641円 | 79% |
このように有期雇用派遣では「ソフトウェア開発(SE含む)」が平均比1.55倍とダントツで単価が高いことがわかります。
同時に、全体平均時間単価が2081円というのは、有期雇用派遣の業務が全体に難易度が軽めの業務中心であると言えます。
無期雇用派遣の業種別派遣単価比較
業種(旧26業種から抜粋) | 時間単価 | 平均比% |
---|---|---|
事業の体制企画、立案 | 3,970円 | 133% |
ソフトウェア開発(SE含む) | 3,681円 | 124% |
機械設計 | 3,384円 | 114% |
研究開発 | 3,350円 | 112% |
通訳、翻訳、速記 | 3,118円 | 105% |
全体平均 | 2,978円 | 100% |
OAインストラクション | 2,927円 | 98% |
建築設備運転、点検、整備 | 2,856円 | 96% |
デモンストレーション | 2,803円 | 94% |
取引文書作成 | 2,766円 | 93% |
広告デザイン | 2,759円 | 93% |
事務用機器操作 | 2,527円 | 85% |
書籍等の制作・編集 | 2,715円 | 91% |
インテリアコーディネータ | 2,665円 | 89% |
アナウンサー | 2,304円 | 77% |
受付・案内 | 1,799円 | 60% |
無期雇用派遣でも「ソフトウェア開発(SE含む)」は高単価上位ですが、平均比は1.24倍と有期雇用派遣ほどの差はありません。
また、全体平均単価が2987円と有期雇用より約900円高くなっており、実質の正社員派遣であることから、難易度は高めの業務中心と言えます。
有期雇用派遣の業種別時間給比較
業種(旧26業種から抜粋) | 時間単価 | 平均比% |
---|---|---|
ソフトウェア開発(SE含む) | 1,996円 | 137% |
事業の体制企画、立案 | 1,982円 | 136% |
機械設計 | 1,840円 | 127% |
デモンストレーション | 1,695円 | 117% |
研究開発 | 1,631円 | 112% |
通訳、翻訳、速記 | 1,647円 | 113% |
OAインストラクション | 1,586円 | 109% |
書籍等の制作・編集 | 1,577円 | 109% |
建築設備運転、点検、整備 | 1,535円 | 106% |
インテリアコーディネータ | 1,521円 | 105% |
広告デザイン | 1,472円 | 101% |
取引文書作成 | 1,453円 | 100% |
全体平均 | 1,452円 | 100% |
事務用機器操作 | 1,348円 | 93% |
アナウンサー | 1,336円 | 92% |
受付・案内 | 1,136円 | 78% |
派遣単価が一番高い「ソフトウェア開発(SE含む)」が当然時給も高いのですが、派遣単価ほど平均との差がありません。
これは、後で説明しますマージン率(派遣会社が労働者を雇用・派遣し利益を得るための経費比率)は業種間での差がほとんど無いためです。
無期雇用派遣の業種別時間給比較
業種(旧26業種から抜粋) | 時間単価 | 平均比% |
---|---|---|
事業の体制企画、立案 | 2,489円 | 130% |
ソフトウェア開発(SE含む) | 2,253円 | 118% |
機械設計 | 2,154円 | 113% |
研究開発 | 2,098円 | 110% |
広告デザイン | 1,964円 | 103% |
OAインストラクション | 1,931円 | 101% |
全体平均 | 1,913円 | 100% |
建築設備運転、点検、整備 | 1,888円 | 99% |
取引文書作成 | 1,890円 | 99% |
インテリアコーディネータ | 1,887円 | 99% |
アナウンサー | 1,852円 | 97% |
通訳、翻訳、速記 | 1,839円 | 96% |
デモンストレーション | 1,776円 | 93% |
書籍等の制作・編集 | 1,700円 | 89% |
事務用機器操作 | 1,693円 | 88% |
受付・案内 | 1,199円 | 63% |
無期雇用では、マージン率に無期雇用のための費用も入るため有期雇用より比率が高くなり、その分、業種間の差がさらに縮まっていることがわかりますが、それでも全体平均より約2割高くなっています。
このように、有期雇用、無期雇用とも「ソフトウェア開発(SE含む)」は、派遣での高単価・高時給業種であることがわかります。
「アナウンサー」「通訳」「デザイン」のようなそれぞれ才能がある程度必要と思われる業種に比べても高く、努力すれば誰でもある程度のポジションまで到達できるという点から魅力がある業種だと思います。
マージン率について
派遣法改正により、派遣事業を行っている会社は派遣単価に含まれるマージン率を公開することが義務付けられました。自身の収入に関わることですので、理解しておきましょう。その内訳は、以下のとおりです。
派遣社員の経費 | 教育訓練費用、福利厚生費用、有給消化に関する負担費用、派遣待機や案件マッチング・高齢化などでの派遣単価ダウンのリスク対策費用(無期雇用)、通勤手当相当(無期雇用) |
---|---|
社会保険関連費用(労働者と会社で折半 | 厚生年金保険、健康保険、雇用保険料、労災保険料 |
派遣会社の会社運営費用 | 間接社員(営業、労務、事務)の給料及び社会保険、雇用保険負担、人材募集・案件営業に関わる広告宣伝費、事務所家賃、光熱費、営業経費(社有車、燃料費、通信費)など |
派遣会社の利益(営業利益) | ― |
計算式:マージン率=(派遣料金額の平均額―派遣労働者の賃金平均額)÷派遣料金の平均額
マージン率の公開により、悪質な派遣会社を排除できると考えられますが、「マージン率」が高いからといって必ずしも悪質というわけではありません。「マージン率」は派遣会社の「利益」も含まれていますが、社会保険料の事業主負担分、有給休暇や福利厚生費、研修費等の費用等も含まれています。
つまり「マージン率」が高いのは、社会保険に適正に加入し、有給休暇も取得ができ、福利厚生や研修が充実しているからとも考えられます。
派遣SEの年収推定
先の「ソフトウェア開発(SE含む)」の時間単価から、1ヶ月20日稼動、平均20時間残業と仮定して単純計算から年収が推定できます。
有期雇用 | 約440万円 |
---|---|
無期雇用 | 約500万円 |
これは、すべての年齢層や業務内容の平均ですが、30代半ばの標準的な派遣SEとして、感覚的には大きく違っていないと思います。
時間単価が有期雇用より無期雇用が上回っているため、推定年収も同様になりますが、同程度の難易度で同程度の時間単価であれば、先のマージン率が有期雇用のほうが低いため、年収は逆転すると思います。
年代別の派遣SE年収試算
「給料BANK」サイトで正社員SEの平均給与(残業ゼロでの年収÷12)データが公表されていますので、それをもとに年代別の派遣SE年収を試算します。
20代 | 30代 | 40代 | 平均 | |
---|---|---|---|---|
正社員平均給与 | 30万円 | 45万円 | 49万円 | 41万円 |
正社員平均年収 | 360万円 | 540万円 | 590万円 | 490万円 |
となります。
それらの企業を派遣先として勤務しているSEの平均給与は、その80%~90%程度と思われますので85%と仮定すると、
20代 | 30代 | 40代 | 平均 | |
---|---|---|---|---|
派遣平均給与 | 26万円 | 38万円 | 42万円 | 35万円 |
派遣平均年収 | 310万円 | 450万円 | 500万円 | 420万円 |
となります。
大雑把な計算ですが、実感としては大きなずれは無いと思います。
業務内容による時間単価の比較
SE業務では、年齢以上に業務内容で時間単価が大きく差が出ます。公表資料からの抜粋を示します。(一般社団法人 日本ニアショア開発推進機構 エンジニア単価情報2016年度版レポート<基幹・業務系エンジニア編>)派遣と請負の区別がありませんので、少し高めになっています。
システム運用
業務内容 | 時間単価 |
---|---|
【マネージメント】 | |
プロジェクトマネージメント | 5,500円 |
品質マネージメント | 5,100円 |
構成管理 | 4,600円 |
【アナリスト】 | |
システム分析 | 5,400円 |
システム要求分析 | 5,500円 |
アプリケーション要求分析 | 4,700円 |
【アーキテクト】 | |
基本設計 | 5,500円 |
詳細設計 | 4,600円 |
データベース設計 | 5,200円 |
テスト設計 | 4,900円 |
運用設計 | 5,400円 |
【実装】 | |
プログラミング | 3,500円~4,300円 |
テスティング | 3,000円 |
運用マネージメント | 5,600円 |
運用リーダー | 4,700円 |
運用担当(定型業務) | 3,500円 |
運用担当(定期業務) | 3,000円 |
【サポート】 | |
ヘルプデスクマネージメント | 5,000円 |
ヘルプデスク担当 | 3,700円 |
テクニカルサポート | 3,400円 |
インストラクション | 3,200円 |
無期雇用ならマネージメント能力を身に着ければ、かなりの高収入が期待できます。有期雇用では、設計力を鍛えることによって一段収入レベルがアップできます。
とは言っても、その上流工程の実務経験がないと案件を成約できない、上流案件に就けないと実務経験が積めないというジレンマがあるのが実情です。
その解決策は資格取得になります。派遣案件営業時にスキルシート提案をしますが、その案件に該当する資格を取得していれば、成約単価・確率ともにはっきりと高くなります。
マネージメント | プロジェクトマネージャ資格 |
---|---|
アナリスト | ITストラテジスト資格 |
アーキテクト | システムアーキテクト資格、ネットワークスペシャリスト資格、データベーススペシャリスト資格、Oracleマスター、CCNP、MCP、LPIC |
実装 | 基本情報資格、応用情報処理資格、エンベデッドスペシャリスト資格、Java認定資格 システム運用ITサービスマネージャ資格、情報セキュリティマネジメント資格、情報処理安全確保支援士、ITパスポート資格、ITIL |
サポート | ITパスポート資格、ITIL |
資格取得は簡単ではありませんが、目標資格を決めて申し込みを行い、試験日まで計画的に学習し、当日に集中して試験に臨み合格するというプロセスを繰り返しできれば、そのこと自体も業務推進力として評価されますし、自信にもつながります。
人材派遣会社と技術サービス会社では、給与の仕組みが違う
人材派遣会社での有期雇用での給与は、先に計算したように派遣単価からマージン率相当額を引いたものですので、派遣先が変わって派遣単価が下がると、自動的に収入も下がってしまいます。
また、通勤手当は自己負担が基本ですから、遠隔地になると同じく手取りが下がります。また、一般に賞与は無く、案件待機時は収入がありません。
技術サービス会社での無期雇用では、派遣事業以外に請負事業や自社事業もあることが多く、その場合は正社員として勤務しますので、会社ごとに給与制度がありそれに従った昇給・昇格で給与が決まります。
このため、派遣案件ごとに左右されず安定していますが、凄腕で高単価業務に就いたからといって即収入が増えるということにはなりませんし、事情で単価が下がったからと言って給与が即下がることもありません。
また、賞与は一般に支給されますが、会社全体の業績に左右されます。人材派遣会社と技術サービス会社では、残業手当の支給方法が異なる場合があります。人材派遣会社の有期雇用では、時間外勤務は、法定割増(通常1.25倍、深夜割増0.25倍、法定休日1.25倍)された実勤時間分支給されるのが通例です。
一方、中小の技術サービス会社での無期雇用では、一定のみなし残業込みで年収固定という制度の企業がかなり多いようです。
この場合、みなし残業より実残業が多いか少ないかで、無期雇用のほうが年収減になる場合も発生します。
フリーランスSEという働き方
派遣ではありませんが、案件ごとに顧客と個人契約を結ぶフリーランス(自営業)という働き方があります。
フリーランスになることで、会社員時代より年収が増える可能性が高くなります。先のマージン率相当額も含んだ収入が直接個人に入るので、順調なときは相当な収入増になります。
しかし、案件営業や社会保険の事務処理、案件が途切れた場合の備え、教育訓練の自己投資など会社が行ってくれたことをすべて自己責任で行う必要があります。
それらのリスクを考えると、よほどの自己管理能力の高いひと以外は、生涯収入では大きな差は無いように思います。
過重労働の抑制の影響(残業時間減少による収入減)
最近、意外な要因で正社員・派遣ともSEの年収減が起こっています。過重労働災害対策です。電通の事件以来、大手企業の過重労働抑制の動きは過剰とも思われる状況です。
IT業界と言えば、月間100時間の超過勤務もそれほど異常とは感じませんでしたが、最近では36協定で60時間上限が主流になってきています。
また、社内SEや定型の運用業務では、基本残業ゼロが普通になってきています。正社員の給与体系は、時間ではない成果主義の方向に変化してきていますが、派遣ではまだまだ時間清算が主流ですので、この影響で単価は上がっても年収がかなり下がっているのが実情です。
とはいえ、過重労働抑制は産業界の大きな流れになっていますので、残業の減少を嘆くより、その分増えた自分の時間をより単価の高い上流工程に進むための自己啓発に積極的に取り組むべきでしょう。
まとめ
SEという仕事は、非常に幅が広く、派遣であれ正社員であれ、地道に努力すれば報われる可能性が高い仕事です。
こつこつと実装することが好きなら得意言語を増やしてください。技術もさることながらひととのコミュニケーションが好きならそれを生かした営業SE、プリセールスSEをめざしてください。
リーダー役が苦にならず向いていると思ったら、PL、PMというポジションがあります。決まったことを正確に行うことが生にあっていたら運用エンジニアを極めてください。
あまり短期的な収入に一喜一憂せず、自分のめざすSE像を明確にして、それに近づけるよう努力を継続すれば、おのずと収入も付いてきます。IT業界は、中身の変遷はあっても縮小することはありません。派遣でSEをやっていますと胸を張って家族・友人に言えるように自分自身で納得して日々業務を進めてください。
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