これからの管理職に求められるマネジメント力―多様性への理解がカギ

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「部下が何を考えているからない」「モチベーションをどう上げればいい?」 このような悩みを抱えている管理職の方は多いのではないでしょうか。

今回は「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進研究プロジェクト」共同代表の佐藤博樹さん(中央大学大学院教授)にお話を伺い、管理職の役割と求められるマネジメント手法についてまとめました。

管理職に就いている方はもちろん、管理職を目指している方も必見です。

管理職の役割と現状の課題

―まず、佐藤教授が考える「管理職の役割」について教えてください。

管理職は部下の働きを通じて、組織目標を達成する者と定義できます。

そして組織目標を達成するには、以下2つの役割を全うする必要があります。

  • 与えられた目標を達成するため、戦略や業務の計画を策定する
  • 計画にもとづいて部下に業務を割り振り、円滑に遂行できるように支援する

つまり管理職には、質の高い戦略の策定力はもちろん、部下の仕事意欲を引き出す「部下マネジメント」のスキルが必要になるのです。

―部下のマネジメントに苦労している管理職は少なくありません。そうした課題の要因はどのようなことが考えられるでしょうか?

近年は社会や働き方の変化によって、過去のマネジメント手法が通用しなくなりつつあります。その変化に、管理職が対応しきれていないことが要因の一つです。

一昔前は、多くの人が「フルタイムで働き、夜遅くまで残業する」「家事育児は妻の仕事」という価値観をもっていました。

しかし今では女性の社会進出が進み、多くの男性が家事育児への参加を求められるようになりました。少子高齢化から、介護に多くの時間を割く人もいます。

社会全体の状況の変化によって、働き方が必然的に変わった人が多くいるのです。

また、ワーク・ライフ・バランスの考え方も一般的になりました。

仕事を覚えるために、夜遅くまで仕事をしたい人もいますが、仕事を定時で終わらせて、仕事以外に取り組みたいことや取り組む必要があることに時間を使いたい人もいます。

このような働き方の変化や価値観の多様化によって、多様な部下一人ひとりのマネジメントに苦労する管理職が増えていると考えられます。

管理職には多様性(ダイバーシティ)を理解し、受け入れる力が求められる

―そうした変化に対応するためには、どのような力が求められるのでしょうか。

まずは「部下の価値観や希望を理解すること」が大切です。

以前であれば、管理職と部下の価値観が近く、かつ仕事に費やす時間が多い環境であったため、話を聞かずとも部下の考えや悩みをある程度理解できました。

しかし部下の価値観が多様化し、仕事以外にも大事な課題がある部下が多くなると,部下を理解するのはそう簡単ではないです。

部下の話に耳を傾け、「どのような仕事をしたいのか」ということだけでなく,「仕事以外の生活において何を重視しているのか」といった希望を把握する必要があります。

次に重要になるのが「多様な価値観を受け入れること」です。

管理職の中には、自分が尊敬していた以前の上司のマネジメントを踏襲する傾向にあり、今の部下の多様な価値観をなかなか受け入れない人もいます。

例えば、「ビジネススクールに通うために定時で帰ります」という部下がいたとします。

一昔前はビジネススクールに行く社会人は少なく、仕事が最優先という考え方が当たり前でした。そのためビジネススクールに通う意義や価値を理解できず、「仕事より勉強の方が大事なのか!」と叱責してしまうことも生じます。

しかし管理職がこのような対応を取ってしまうと、部下のモチベーションは著しく下がり、最悪の場合離職につながってしまうケースもあります。

部下をうまくマネジメントするためには、自分の中にある固定概念を捨て、部下の価値観の変化に柔軟に対応していかなければなりません。

―部下の立場からは,自分の価値観を認めてもらえれば、モチベーションアップにつながりそうです。

誤解されやすいのですが、「多様な価値観を全て受け入れろ」と言っているわけではありません。

組織で働く以上、一人ひとりの希望が全て通ることはないでしょう。

「あなたの希望を検討したが、部署の体制上対応できない。別の方法を考えよう」というように、管理職側からの要望を伝えることも時には必要です。

大切なのは、部下が「上司は自分を理解しようと努力している」という感覚をもてるようなマネジメントを行うことなのです。

評価基準と育成方針もアップデートが必要

―ありがとうございます。価値観の多様性を受け入れる以外に、管理職に求められることはありますか?

部下の働き方に関する評価基準や育成方針を変えていかなければなりません。

まず部下の働き方に関する評価について、これまではかけた時間にかかわらず、良い仕事をした人が評価をされがちでした。

例えば,フルタイム勤務で2時間残業して,10時間勤務で100の仕事をしたAさんと、短時間勤務の6時間勤務で、70の仕事をしたBさんだと、成果の量のみではAさんの方を高く評価されます。しかし1時間あたり,つまり生産性では,Bさんの方が高く,Bさんを評価すべきなのです。

つまり,仕事の成果のみでなく,投入時間あたりの成果,つまりいかに効率良く成果を出すことができるかが,部下の働きぶりの評価では大事になります。時間あたりの成果で評価しないと,働き方改革はできませんし,多様な人材の活躍は望めません。

―費用対効果を意識するということですね。

また部下を育成するという観点では、仕事以外の学びに時間を使うこと,つまり自己投資の重要性を理解してもらう必要もあります。

確かに短期的に見れば、長時間労働をした方が成果を出しやすいこと仕事もまだあります。

しかし変化の激しい今の時代では、ビジネススクールに通う・資格を取るなど、業務外の時間を使って自己投資しないと,予測できない仕事の変化に対応できないことにもなります。

5年後、10年後も活躍する部下を育成するためにも、自己投資を促すようなコミュニケーションを心掛けてみてください。

佐藤 博樹 中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授

中央大学佐藤教授

東京生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て、現職。東京大学名誉教授

著書として、『人材活用進化論』(単著)、『人事管理入門(第3版)』(共著),『職場のワーク・ライフ・バランス』(共著)、『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』(共編著)、『実証研究 日本の人材ビジネス』(共編著)、『新訂・介護離職から社員を守る』(共著)、『ダイバーシティ経営と人材活用』(共編著)など。

兼職として、内閣府・男女共同参画会議議員、内閣府・ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員、経産省・新ダイバーシティ経営企業100選運営委員会委員長、ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト共同代表など。 

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