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薬剤師が物申す!2018年12月前半のニュース|残薬500億円の現実 他

少し前まではまだ少し暖かい日がときどきありましたが、最近は年末も近いということでとても寒い日が続いていますね。みなさま風邪など引かれていませんでしょうか。

さて今回も薬剤師関連のニュースをご紹介していきます。12月前半に起きたニュースの中から3つをピックアップし、ニュースの概要とそれに対するコメントを紹介していますよ。もちろん薬剤師目線でコメントをしていますので、ぜひ今回もチェックしてくださいね。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

抗インフル薬の使用で注意喚起

ニュース概要

医薬品医療機器総合機構(PMDA)はこのほど、厚生労働省が作成した抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起資材をホームページに掲載した。医療機関などに対し、資材を用いたインフルエンザ罹患時の対応についての注意喚起を促している。

厚生労働省は、抗インフルエンザウイルス薬の使用上の注意に関する注意喚起用の資材を作成。医療機関等に対して、同資材を用いたインフルエンザ罹患時の対応についての注意を呼びかけている。

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エムスリー 2018/12/14

コメント

寒い季節になると毎年話題になるのがインフルエンザです。とくにタミフルが関係していると見られる異常行動が報道された年は、多くの方がインフルエンザや抗インフルエンザ薬に興味を示したのではないでしょうか。

あたかもタミフルが異常行動の原因であるかのような報道が続いていましたが、実はタミフルと異常行動との因果関係はいまだにハッキリとしていない部分が大きいです

しかし医療関係者ではない一般の方は「子供がタミフルを飲んでいるから異常行動がないかしっかり見ておかないと」と、タミフル=異常行動のように捉えている方が多いというのが現状でしょう

そのような中、新しい抗インフルエンザ薬としてゾフルーザが販売されたことは記憶に新しいですね。医療従事者からすると驚いてしまうのですが、「ゾフルーザなら異常行動が起こらない」と思われている一般の方が意外と多くいます。

タミフルが異常行動の原因、他の抗インフルエンザ薬は安心と思われている方が残念なことにとても多いんですね。このような背景もあってか医薬品医療機器総合機構(PMDA)から抗インフルエンザ薬の使用における注意喚起がされました。

厚生労働省がインフルエンザに関する注意喚起のパンフレットを作成し、このパンフレットを使って医療機関などに呼びかけを行っています。どのようなパンフレットなのか知りたい方は、ニュースの参考URLからご確認ください。

パンフレットには赤字で抗インフルエンザ薬の服用の有無や種類にかかわらず、異常行動が起きる可能性があることがしっかりと説明されています。

たとえば薬局にインフルエンザの患者さんが来られた場合は、このパンフレットを使って服薬指導をするとより患者さんもインフルエンザと異常行動との関係性について、しっかりと理解してもらうことができますよね。

むやみに服薬指導のときに異常行動について触れるのもどうなのかなとは思いますが、一般の方に正しい知識を持ってもらうためには有効な手段でしょう。

ここ最近ではあらゆる情報がネットで手に入るようになりました。明らかに間違っている情報がTwitterでバズって何万もの「いいね」を獲得していることもあります。

偏った情報が簡単に拡散されていく世の中だからこそ、この抗インフルエンザ薬の注意喚起のように正しい情報をしっかりと広めていかなければなりません

1人の薬剤師がどんなに頑張ってもなかなか正しい情報を広めることはできませんが、大勢の薬剤師が正しい情報を発信していくことで一般の方の健康意識も変わってくるのではないでしょうか。

「不安でストック」「飲み忘れ」残薬500億円の現実

ニュース概要

医師から処方された薬を飲み残して発生した「残薬」。日本薬剤師会が75歳以上の在宅医療を受けている患者を対象に行った調査(2007年度)によると、「飲み忘れた」「飲みづらくて飲み残していた」などの理由で生じた残薬の粗推計金額は年間約500億円に上ると報告されています。

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毎日新聞 2018/12/6

コメント

残薬だけで500億円にも上るというこの事実。薬剤師としては見過ごせない問題ですよね。国家予算の約半分である40兆円以上を医療費が圧迫していることをどれだけの方が知っているのかが気になるところです。

必要のない医療費を削減できれば、どんどん値上がりしていく消費税にも歯止めをかけられるかも?なんて思っているのですが、どうでしょう。そんな簡単な話ではないかもしれませんが、無駄なことでもないと私は思っています。

さてこのニュースを読む限り、薬が飲みきれずに残ってしまう理由としては以下の理由が挙げられています。

  • 単純に飲み忘れ
  • 薬が飲みづらくて残っている
  • いざというときのためにストックしている

飲み忘れはとくにお昼の飲み忘れが多いですね。朝と夜はしっかり飲めるけど、どうしても昼だけ飲み忘れてしまう方は多いです。

錠剤が大きくて飲みにくい、味が好みでないなどの理由で飲まずにそのまま取っておかれる方、いつか使うかもしれないからと取っておかれる方と、残薬ができる理由は非常に多岐にわたります。

薬剤師からすると家に飲みきれない薬があるなら、遠慮せずに教えてほしいと切実に思うところです。薬の量が多くてうっかり飲み忘れてしまうのなら一包化もできますし、大きくて飲みにくいなら別のお薬に変えたり半錠にしたりすることだってできます。

何よりも残薬があることを知らせてくれれば残薬から飲み切るように、処方されているお薬の量を調節することが可能です。

しかしなぜか患者さんは残薬があることについて、薬剤師にあまり相談されません。これについて私は少し思うところがあります。

まず患者さんが、薬剤師に残薬の相談をしようという考えがそもそもないような気がします。薬剤師は処方せんのお薬をくれる人であり、気になることを相談する人ではない。

そう思っている方が多いのではないでしょうか。実際に調剤薬局で働いていたとき、患者さんから何かを相談してくるというのはほとんどありませんでした。

薬剤師からしたらもっと何でも相談してほしいと思っているのに、患者さんが薬剤師の使い方を知らない気がするのです。

実際に私も薬剤師になる前は、薬剤師は薬局でお薬をくれる人というイメージが強くありました。薬剤師ができることを患者さんがもっと知ってくれたら、もしかしたら残薬も減るのでは?と私は考えています。

残薬が増えてしまう原因についてもう一つ言えるのは、処方してもらったお薬が10割負担だとどれくらいの価格になるのかをあまり気にしていない方が多いのもあるでしょう。

ドラッグストアで買うよりも安いから、タダで処方してもらえるからと必要のないお薬まで医師に頼み込んで処方してもらうとする方は多いです。

薬剤師に相談してくれれば残薬の調整ができること、飲みやすいお薬に変更することも可能であること、そして患者さん一ひとりに療費についてもっと関心を持ってもらうことが残薬を減らしていく一歩となるでしょう。

カフェのような漢方の店、大阪に登場

ニュース概要

中国を起源に日本で発展した漢方薬。現在は粉末や錠剤で飲むが、元は生薬を煎じてお茶のようにして飲むスタイルだ。そんな漢方ドリンクを気軽に飲める専門店が、大阪の「なんばスカイオ」(大阪市中央区)に登場した。

店頭には20種以上の漢方がラインアップ。気軽に体調相談ができるよう、白石さんはじめ漢方に精通した先生のカウンセリングもおこなわれる

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Lmaga.jp 2018/12/5

コメント

さまざまなニュースを読んでいて、もっとも興味をそそられたのがこちらの漢方ドリンクを楽しめるカフェ「KAMPO煎専堂 光る堂薬店」のニュースです。

「え?!カフェ気分で漢方薬が飲めるなんて発想が素敵!」と心がウキウキしました。なぜなら「いつか漢方薬局に行ってみたいけど、なんとなく薬局に入りづらくて行けない」という状況が私自身、何年も前から続いているからです。

あなたの周りにも漢方薬局がないでしょうか。普通の薬局と違って店内に入りにくい、そしていくらお金がかかるかわからないという不安が大きいため、なかなか薬局に足を踏み入れることができません。

店内に入るだけならまだなんとか勇気を出せそうですが、いくらかかるかわからないのは正直大きいです。私の知り合いに漢方薬局でお薬を頼んだら1か月分で7万円もしたという方もいます。さすがにここまでの大金を使う勇気はありません。

しかし漢方を試してみたいけど、なかなか試せないという私のような人にとって、このカフェのようなお店はとても画期的です。

明るい店内で入りやすいですし、漢方薬局特有のあの厳かな感じもなく気軽に漢方薬デビューができそうですね。

漢方薬に精通した薬剤師のカウンセリングも受けられ、しかも一杯418円(税込)で飲めるのは嬉しいものです。

よくあるようなカフェでお茶をするよりも下手したら安く済むかもしれませんね。今までなんとなく入りにくいと感じていた漢方薬局のイメージをきれいに覆してくれます

KAMPO煎専堂のホームページでは、それぞれの漢方薬の説明やちょっとした健康ネタを動画で見ることも可能です。薬剤師だけでなく、漢方や健康に興味のある方、一般の方でもわかりやすいように、優しい口調で説明されているのでついつい見入ってしまいますよ。

薬剤師の就職先としては病院や調剤薬局、ドラッグストアが一般的です。これらの就職先のイメージが強いため、薬剤師の就職は選択肢が少ないと言われてしまうこともあります。

しかしこのKAMPO煎専堂のように、自ら考えたコンセプトでお店を作っていくことも実は可能です。自分が興味のあること、もっと周りに広めたいことに特価してお仕事をしていくのも楽しそうですね。

KAMPO煎専堂は、漢方薬を試してみたいけど試す勇気がなかった方も気軽に試せますし、新しい薬剤師の働き方も見せてくれます。

このような新しい試みをしてくれる薬剤師が増えていくと、お薬の味方や薬剤師に対するイメージは大きく変わるでしょう。KAMPO煎専堂は、大阪に行った際にはぜひ立ち寄りたい場所です。

まとめ

12月前半のニュースとして今回は、

  • 抗インフルエンザ薬の注意喚起
  • 500億円にも上る残薬
  • 気軽に漢方薬を試せるカフェのようなお店

の3つをピックアップしました。タミフル意外の抗インフルエンザ薬では異常行動の心配がないと思われている方も多いので、もっとインフルエンザについての知識は広めていきたいですね。

残薬も減らさなきゃとはわかっていても、薬剤師と患者さんの意識にまだまだ差があるのが現状でしょう。気軽に入れて一杯350円で漢方薬を飲めるお店は、大阪だけでなくぜひとも全国に広がってほしいですね。漢方薬について、薬剤師についてもっと知ってもらうよい機会になると思います。

この記事を書いた人
薬剤師兼ライター
まりもさん
薬学部を卒業後、新卒でドラッグストアに就職。暗算が苦手なため調剤ではなくドラッグストアという道を選択。現在はライター業をメインに活動中。 ドラッグストアでの勤務経験を活かし、市販薬の説明記事や薬剤師の転職お悩みを解決する記事などを執筆を担当。
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