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薬剤師が物申す!2018年8月前半のニュース|PPI、スイッチ化見送り 他

あっという間に夏が終わりに向かい始めましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。今回、こちらの記事では2018年8月前半に起きた薬剤師関連の注目すべき3大ニュースをご紹介。

毎日ニュースをチェックする余裕がないという方も、ニュースは欠かさずに必ずチェックしているという方にもぜひチェックしていただきたい内容です。8月前半に起きた3大ニュースそれぞれについて、薬剤師目線で意見を述べていきます。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

PPI、スイッチ化見送り

ニュース概要

厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は1日、スイッチOTC薬の候補となる5成分を評価。

前回会議で「継続審議」扱いとなっていた、「オメプラゾール」「ランソプラゾール」「ラベプラゾール」のプロトンポンプ阻害剤(PPI)3成分について再度、審議したものの、厚労省が行っている一般用医薬品の「覆面調査」の結果から、薬局での「販売体制の不備」が浮き彫りとなり、スイッチ化は「否」と判断されました。

薬剤師関連ニュース | 薬剤師求人サイト ヤクジョブ 2018/8/3

コメント

以前からスイッチ化されるのかどうか、議論がされていたオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールの3種類のPPIたち。

ついに「スイッチ化はしない」という結論がなされました。私個人としてはPPIが市販で買えるようになったら非常に便利になると思っていたのでやや残念なところです。

ドラッグストアに胃薬を買いに来られる方の中にはけっこうな確率で「今このお薬を飲んでいるんですけど…。」と言い、PPIを見せてきます。

もちろん同じものはないのでこちらとしては少し効果の弱いH2ブロッカーを勧めることになるのですが、患者さんのつらい症状を見ていると市販でもPPIの取り扱いがあったらなと思ってしまいます

現場の都合はさておき、私はこのニュースを見て残念に思ったことがPPIのスイッチ化の否決を除き、2点あります。

  • 薬剤師の信頼度がまだまだ低い
  • なぜ濫用の恐れがある医薬品を複数個売っているのか、その実態について触れられていない

上記の2点について非常に気になりました。それぞれについて詳しく述べていくことにします。

薬剤師の信頼度がまだまだ低い

これを読んでいる方は、日本とアメリカでの薬剤師の年収が大きく違うことをご存知でしょうか?日本の平均年収は約540万円、一方でアメリカは約1100万円もあります。

日本はアメリカの半分ほどしかないんですね。これは、アメリカとの医療保険制度の違いも大きく関係しているのですが、任せられている薬剤師の仕事に大きな違いがあることが主な要因。

病気になったら医者ではなく薬剤師にかかるのが一般的なアメリカでは、薬剤師が予防摂取をしたり、医師からの委任があればお薬を自ら処方したりすることも可能。一方で日本の薬剤師は当たり前ですが、そのようなことはできません。

つくづく思うのですが、日本の薬剤師はまだまだ信頼度がたりていないと思うのです。アメリカの薬剤師のように患者さんから慕われる地位をもし築けていたら今回のPPIも可決されていたのでは?と思ってしまいます。

今回、PPIのスイッチ化が否決されたのは「薬局での販売体制の不備」とありますが、薬剤師の地位の低さも関係しているのではないでしょうか。この記事を読んで、薬剤師の信頼度の低さや力不足さを暗に懸念されているように感じました。

なぜ濫用の恐れがある医薬品を複数個売っているのか、その実態について触れられていない

記事中に『濫用の恐れがある医薬品を複数購入しようとして、「質問されずに購入できた」薬局が2016年度は36.6%』とあります。

「登録販売者が対応しているケースもある」ことが主な原因であるかのように書かれていますが、ではなぜ、登録販売者が対応するケースが多くなってしまうのかという点にも踏み込んで欲しいところ。

登録販売者がこういったお薬を販売しなくてはならなくなるのは、ドラッグストアで薬剤師が不足しているためです。薬剤師不足が深刻なため、過労を強いられているケースも珍しくありません

休憩もろくに取れず、毎日のように10時間以上働いている薬剤師もいる中、要指導医薬品や第一類医薬品、その他のお薬の対応をしている薬剤師に、複数購入の確認まですべてさせることは、不可能に近いもの。

濫用の恐れがある医薬品を登録販売者が対応しているから、質問されずに購入できる人の割合が増えていると思うのであれば、ドラッグストアの薬剤師の過酷な労働環境の見直しも視野に入れてほしいところです。

「国民は医薬分業のメリットを感じていない」

ニュース概要

ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長は、「多くの国民は医薬分業のメリットを感じていない。

待ち時間が増え、持ち出しの負担も増えただけというのが実感ではないか」として、「すでに淘汰は始まっている。調剤しかやっていない薬局が成り立たないようにしていかなければならない」との認識を示しました。

ニュース本文を読む

PHARMACY NEWSBREAK 2018/8/15

コメント

それぞれの医療従事者がそれぞれの専門性を発揮して、患者さんに最適な医療を提供しようと始まった医薬分業。

私がまだ薬剤師という仕事についてほとんど知らない年齢だったころ、私自身も院内処方ではなく、わざわざ病院の外にお薬を貰に行くのが面倒だと感じていました。

薬剤師になった今でも、本当に具合が悪いときは「院内処方の方がすぐにお薬を貰えるから楽だ。」と感じてしまいます。

薬剤師である私が医薬分業のメリットをそこまで感じていないので、患者さんはもっと感じていないことでしょう。

実際に、医薬分業のメリットを感じているか、感じていないかを一般の方にヒアリングしたとある調査の結果によりますと、約80%の方が医薬分業のメリットを感じていないと回答しています。

医薬分業にすることで、お薬を患者さんに渡すまでに薬剤師のチェックが入るため、患者さんの安全性が上がるのが主なメリット。しかし、このメリットはなかなか患者さんに伝わっていません。

患者さんからすれば、薬の安全性が高まるというメリットよりも

  • わざわざ薬局まで行かなくてはならない
  • 待ち時間が長くなる
  • 体調が悪いのにすぐにお薬を貰えない

といったデメリットの方が大きく感じてしまうのです。自分の体の安全よりも、利便性を重視する方のほうがとても多いのですね。その理由を考えてみました。

私が出した結論としては、「患者さんサイドが、薬剤師が処方箋を受け取ってからどのような手順、思考回路で調剤をしているのかを知らない。」という点が大きいのだと思います。

AIが発達すると薬剤師の仕事がなくなると巷でささやかれていることが、この考えの裏付けとなるでしょう。

  • 薬剤師は袋詰をしているだけ
  • 袋詰なら機械にやらせた方が正確

残念ながら、このように思われている患者さんは少なくありません。医師が処方しているお薬に、間違いがある可能性があるということをそもそも患者さんが気づいていないのです。

確かに、多くの処方箋は特に疑義照会をせずに調剤に進めます。だから、多くの患者さんが薬剤師は袋詰をしているだけと思ってしまうのでしょう。これは仕方のないことかもしれません。

しかし、そう思わせてしまうのには薬剤師の技量不足があるのもまた、否めない事実。医薬分業のメリットを患者さんに実感してもらうためには、まだまだ時間がかかりそうです。

月2回は訪問、1回はスマホ…遠隔服薬指導どう活用

ニュース概要

国家戦略特区における遠隔服薬指導の登録事業所となったHyugaPharmacy(福岡県春日市)。中医協で関連報酬の算定が了承された7月18日、福岡市内の店舗で行った全国初の遠隔服薬指導は円滑に終了しました。

ニュース本文を読む

PHARMACY NEWSBREAK 2018/8/3

コメント

この度、ついに遠隔服薬指導なるものが開始されました。これは、在宅もしている調剤薬局からすると、とても画期的な制度でしょう。

実際に患者さんの家まで足を運ばなくても服薬指導や残薬の確認、患者さんの状態の確認ができてしまうのです。

ニュース本文にあるように、毎度、片道40分もかけて在宅に行くのは効率が良いとは言えません。在宅に出ている間は、薬局に薬剤師がおらず不在となってしまう薬局もある中、こういった取り組みが推進されていくのは実に嬉しいもの。

遠隔服薬指導はパソコンやスマートフォンを使って行われます。患者さんと薬剤師がお互いにモニターの前に座ることで、お互いがお互いの顔を見ながら会話ができる仕組みです。

一見、便利に見えるこの遠隔服薬指導ですが、まだ始まったばかりということもあり、もちろん数々の問題を抱えています。

例えば

  • モニターの前まで自力で歩けない患者さんには厳しい
  • 残薬の確認がモニター越しなので、モニターに映らない場所にあるものは把握できない
  • 患者さんがスマートフォンやパソコンを扱える必要がある

などです。すべての在宅患者さんの遠隔服薬指導をする必要がそもそもないので、これらのデメリットを挙げるのも間違いなのかもしれませんが、やはり実際に患者さんの家を訪ねてお薬を管理するのとは勝手が違います。

また、薬剤師サイドからすれば「行くのが大変」という認識でも、患者さんサイドからすれば「お薬の相談もできる家族のような存在」と認識してくれている方も実際にいます。

私の知り合いで在宅をしている薬剤師が「患者さんが自分の家の鍵を渡してくれたんだ。何かあったときはこれで家に入ってくれって。

他に身よりがいないから私と家族のように接してくれる。」と言っていたことがあります。患者さんと薬剤師という関係を超え家族のような間柄になれるのは在宅をしている薬剤師ならではのメリット。

遠隔服薬指導は、大幅な時間の短縮ができる素晴らしい制度ではありますが、従来の在宅のような温かみや、患者さんに与える安心感を壊さないようにうまく利用していく必要があるでしょう

まとめ

今回、8月前半の3大ニュースとして

  • PPIスイッチ化の否決
  • 医薬分業のメリット
  • 遠隔服薬指導

の3点についてお話をしました。

PPIのスイッチ化が否決されたのも、医薬分業のメリットをほとんどの方が感じていないのも、薬剤師がまだまだ医療という現場に足を踏み込みきれていない証拠。

私たち薬剤師は、まだまだ働き方を改革していく必要があると感じています。新しい働き方として遠隔服薬指導が導入されましたが、こちらはこれからの展望がとても楽しみな反面、これまでの患者さんとの関係を壊さないかが少し心配でもあります。

しかし、保守的な国と言われる日本で、新しいことを始めるのはとても大変なこと。その中で遠隔服薬指導が実現できたのはすごいことだと思います。「ただの袋詰め」と言わせない薬剤師に少しずつ近づいているのではないでしょうか。

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