薬剤師が物申す!11月前半のニュース|高齢者の多剤服用防止で処方見直し 他

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今回は、11月前半に起きた薬剤関連のニュースについて3点取り上げています。今後、薬剤師業界や製薬業界は、今までと同じことをしていたのでは生き残れない時代になってきていると思います。

今回の記事から、薬剤師がどう変わっていくべきなのか、製薬会社がどうあるべきなのかについて論じていますので、ご参考下さい。

子供への薬の誤投与、15年以降136件 入力ミス目立つ

ニュース概要

大学病院や国立病院機構の病院などを対象にした調査によると、2015年からの3年半で、小児への薬剤投与の医療事故は136件に上ることが分かりました。

小児は成人よりも健康被害が出やすく、過去には死亡事例もあります。今後も医療現場で細心の注意を払えるよう、注意喚起を続けていくことが大切です。

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日経新聞 2018/11/9

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今回の集計は大学病院などの基幹病院のみが対象となっていますが、中小の病院やクリニックも含めると、小児への誤投与件数はかなりの数になるかと思います。また、健康被害がなかったため気づかず服用しているケースもあるかと思います。

小児は少しの体重や年齢の差で薬の量が変わることがありますので、大人に対してよりも注意深く薬を処方する必要があります。

調剤薬局で働いていても、小児の処方せんで薬の量が間違っていたため、医師に疑義照会をするという機会は少なからずあります。

医師といえども薬の全てを完全に把握しているわけではありませんので、誤投与による医療事故が起こらないようにするには、薬のスペシャリストである薬剤師の働きかけも重要になってきます

では、医療事故を減らすために薬剤師ができることとはどのようなものでしょうか。ここでは、3つのステップに分けてご説明します。

ステップ1:医師からの処方せんに間違いがないかチェック

よくあるのは薬剤量の違い、剤形の違いなどです。粉薬は体重や年齢によって用量が違っており、中には〇歳までは粉薬、〇歳以上は錠剤といった具合に剤形が異なるケースもあります。

また、小児への服薬指導を行う際は、現在の体重や他科で服用中の薬がないかといったチェックをこまめに行います。

病院で伝え忘れていることもありますので、もし他科で服用中の薬と重複していたり、相互作用があり併用注意、併用禁忌となっているような場合も疑義照会を行います。常に「間違いがあるかもしれない」という意識をもって調剤する必要があります

ステップ2:正しく薬を調剤する

名前が類似している薬など、特に気をつけて調剤をしなければいけません。粉薬では色が同じ薬も多く、調剤の時に間違えてしまうと患者さんが気づけないこともあります。少なくとも2人以上の薬剤師が監査できる体制を整えることが大切です

ステップ3:患者さんが正しく服用できるように服薬指導

小児への服薬指導は、基本的には親に対して行います。帰宅してからしっかり服用できるかどうかは、薬剤師の説明にかかっています。

子供が騒いでいると落ち着いて説明を聞けないことも多く、帰ってから「これはどんなときに飲ませるの?」と電話で質問を受けることもあります。

そんなときには、特に注意が必要な薬は家で見れるように患者さん向けの指導せんを作っておくなどの工夫も必要になります

また、兄弟間で薬を間違えて飲ませてしまうと、健康被害につながる危険性がありますのでこれも注意が必要です。

今回の記事では薬剤師については触れられていませんが、医療事故の責任の半分は薬剤師にあるといえます。

薬剤師が見落とさなければ事故は防げるものです。高い責任感を持って仕事に取り組むことが大切かなと思います。

高齢者の多剤服用防止で処方見直し 減薬へ厚労省方針

ニュース概要

厚生労働省が減薬を中心とした処方の見直しを医療機関に求める方針を固めました。特に高齢者に関しては、服用する薬の種類が増えすぎて健康被害が出るなどの問題が起きています。

飲み忘れも多く、医療費の増加にもつながるため、全ての薬剤に対してその必要性を再考することが医療現場には求められます。

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産経新聞 2018/11/3

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高齢者になるにつれ、服用する薬の数は増えていきます。統計では、75歳以上の4割が5剤以上服用しているようですね。他剤服用は飲み忘れも多く、健康被害も出やすいため問題になっています。

例えば内科にしかかかっていない患者さんなら、一包化をすれば飲み忘れ防止になりますが、複数科で受診している場合は薬をもらうタイミングも異なるため、一包化してまとめることが難しくなります。

実際、しっかりと服用していると思われる患者さんでも、家族がチェックしたら飲み忘れた薬が大量に出てきた、なんて話は薬局で働いているとよく聞かれます。

今後高齢化社会が一層進む中で、一人当たりの薬の数は増えていくと予想されます。薬剤師としては、飲み忘れがないように適切な服薬指導を行う、状況に応じて一包化を行う、健康被害が出ていないか常にチェックするといったことがこれまで以上に大切になります。

また、18年4月の調剤報酬改定では新しく服用薬剤調整支援料というものが制定されました。これは、6種類以上の内服薬が処方されていた患者について、本人の意向を踏まえて薬剤師が文書を用いて処方提案し、内服薬が2種類以上減少した場合(少なくとも1種類は薬剤師が提案する必要がある)に算定できるというものです。

つまり、薬剤師からも患者さんの薬剤数を減らすよう働きかけができるようになったのです

調剤薬局は、現在の門前薬局体制から、地域のかかりつけ薬局となっていくことが求められています。

そうすると、薬剤師は隣接するクリニックから処方される薬だけでなく、他科も含めた患者さんが服用している全ての薬を把握して、トータルサポートを行うことになると思います。

つまり、内科のこの薬と整形外科のこの薬は作用が似通っているので、どちらかを減らしてもいいかもしれませんよ、といった提案を行うことになります。これは、他科の状況を把握していなければわからないことです。

服用薬剤調整支援料はまだ始まったばかりなのであまり積極的に行っている薬局は少ないですが、今後かかりつけ薬局化が進むにつれ、薬剤師が処方に関われる機会も増えていくのではないかと思っています。

スパコンとiPSが変える新薬開発 失敗品が復活へ

ニュース概要

スパコンやAI、iPS細胞などを活用して、これまでに失敗したデータから新薬開発を行う取り組みが製薬各社で始まっています。

これまでは3万分の1と言われていた新薬開発の成功率も、新たなプロセスで取り組むことで、成功率の上昇や開発コストの削減などが期待されます。

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日経新聞 2018/11/2

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新薬の研究が実を結ぶのは数万分の一で、1つの薬を開発する為には莫大なコストと時間がかかる、というのはこれまでの製薬業界の常識でした。

しかし、今回の記事にあるように、iPSやAIの活用が成果を挙げるようになれば、今後は創薬の手法が変わって行くかもしれません。

iPS細胞に関しては、他にもパーキンソン病患者への治験を初めて行うなど、様々な分野で実用化に向けた動きが加速しています。

これまでは、製薬の研究は自社の研究施設で、自社の社員だけで行うというイメージがありました。

しかし、海外の製薬各社が積極的なM&Aを行い、開発力を高めているのに対し、国内の製薬会社は開発力に劣り、自前の開発に限界が見えてきているところだと思います。

失敗品のデータを外部に公開するといった取り組みからもわかるように、今後は他社との連携により生き残りを模索していくことになるのだと思います

連携するのは製薬会社間だけではありません。iPS細胞の研究やAI、スパコンといったIT分野では日本はトップクラスの水準にあると思います。

そういった分野と連携を取ることで、製薬会社の国際競争力も回復させることができるのではと期待できます。

まとめ

普段飲み合わせなど適切な服薬指導を行っている薬剤師であっても、実際に自分が薬を飲むときには飲み合わせや用法・用量などさほど気にしなくても、「大きな影響はないだろう」と考えてしまいがちです。

しかし、特に今回の記事にあるような小児や高齢者に関しては、健康被害が出やすいものです。そのため、医療事故が起こらないようにするのは当然ですが、患者さんにとってベストな薬物治療ができるように、医師をはじめとした医療スタッフ全員でしっかり取り組んでいかなければなりません。

薬剤師も、薬のスペシャリストとして、また患者さんのかかりつけ薬剤師として医師や他のスタッフとは異なる視点から提案できる機会もあるかと思います

また、製薬会社の新薬開発に関する記事は非常に興味深く読むことができました。現在行われている研究がどのような形で実を結ぶのか、注視していきたいと思います。

この記事を書いた人
薬剤師兼ライター
けちゃおさん
薬学部を卒業後証券会社に入社。その後、MRを経て調剤薬局の薬剤師として勤務。
現在は薬剤師として働くかたわら、ライターとして医療・薬剤師・キャリア等に関する記事を多数執筆。
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