日本とは根本的に違う「漢方のあり方」台湾人が漢方とともに歩んできた道

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日本人である私たちが、漢方と聞いて最初に連想するのは、やはり『薬』という文字であろう。しかし台湾では少し違うようだ。台湾人からすると、漢方は薬というよりも食事の一部、さらに言えば生活の一部なのである。

これは決して大げさに言っているわけではない。というのも台湾人は、子どもの頃から日常的に漢方を摂取してきた。

台湾では子どもが成長期に差し掛かると、成長促進のために漢方を飲み始める。これはどの家庭でも一般的に行われているのだ。

今回は、日本とは根本的に違う『漢方のあり方』について、今年、創業72年を迎える漢方の大手老舗、順天堂で総経理を務める莊 武璋(そう ぶ しょう)さんにお話を伺った。

漢方と共に成長してきた台湾

台湾人は、漢方とともに成長してきたといっても過言ではありません。私たちが最初に漢方を飲み始めるのは、10歳を迎える頃。より自然な成長を促すために、男の子は男の子用の、女の子は女の子用の漢方を飲み始めます。これは私の両親が子どもの頃から続く台湾の伝統的な文化の一つと言えます。

>左の赤いパッケージが女の子用、右の青いパッケージが男の子用の漢方。

成分は、女の子用が(鹿角、亀、穀芽、当帰、黄耆、玉竹、枸杞、遠志、青パパイヤ、人参、紅花)男の子用が(鹿角、亀、穀芽、黄耆、茯苓、山薬、遠志、枸杞、人参、蛇床子、紅花)

日本で漢方は、風邪をひいたときに飲む薬の一種というイメージが強いようですが、台湾では違います。喉が渇いたときには、漢方の一つである菊茶を、食事のときには漢方を使ったスープを食べます。まさに文字通り、生活の一部になっているんです。

--なぜ台湾人にとって、漢方はそこまで身近な存在なのでしょうか?

それについて説明する前に、順天堂が歩んできた歴史について簡単に説明させてください。

まず、台湾に漢方が伝わったのは1850年のことです。港町である迪化街(てきかがい)に、中国から乾物やお茶と一緒に輸入されるようになります。

その当時から漢方は、薬として摂取するだけではなく食事の一部としても摂っていました。しかし当時の漢方といえば、お湯で煮出してから飲むことが一般的。飲むまでには手間も時間もかかっていたんです。

そこで、私たち順天堂の創始者である許鴻源 博士(きょ こう げん)は、日本での留学経験を生かし、煎じずに摂取出来る漢方エキス剤を開発しました。このことで漢方は、手軽に摂ることができるようになり、台湾人にとって、より身近な存在へなっていくのです。

--順天堂の功績によって、漢方は台湾人にとってより身近な存在にしていったんですね。

産地直送を徹底し、世界一の品質管理を

さらに私たち順天堂は、漢方の管理方法も見直しました。今までの漢方は、生産者はもちろん、生産地もわからないような状態で市場に流通していたんです。

私たち台湾人にとって身近な存在となった漢方ですが、その安全性には多くの疑問が残る状態でした。近年は、環境汚染や農薬などの問題が頻発しています。いくら健康に良い漢方でも、農薬が残留していたり、環境汚染の影響による毒物が付着していたりしたら意味がありませんよね。

--たしかにそうですね。

例えば、目に良いと思って摂取していた漢方に、毒物が付着していたらどうなるでしょうか。「目は良くなったけど、今度は毒物の影響で内臓が悪くなった」ということにもなりかねない。私たちは、漢方という健康に直結する商品を取り扱う以上、安全性には少しの間違いもあってはいけないのです。

そこで我々順天堂は、創設者が日本留学で学んだ『徹底的な管理体制』をいち早く取り入れました。現在も我々の取り扱う漢方は、例外なく全て産地と生産者が把握できるようになっています。ここまで徹底した品質・安全性の管理を行なっているのは、今現在も、おそらく 私たち順天堂だけでしょう。

--日本も台湾の漢方文化に一役買っていたと。台湾の漢方文化を語る上で、順天堂は欠かせない存在のようです。

世界各地で利用される順天堂の漢方

>順天堂は、アメリカやヨーロッパをはじめとする各国の厳しい検査をクリアし、輸入許可を得ている。このことからも、その高品質ぶりをうかがうことができる。(写真は、順天堂本社のエントランス)

さらに我々は、着色料などを使わず、できるかぎり過度加工しなくても自然な状態でお客様に届けることにこだわっています。

これは順天堂で販売しているクコの実です。

よく見ると、粒ごとにそれぞれ色味が若干違いますよね。当たり前のように思えますが、市場に出回っているモノには、着色料を使用して全て同じ色になっているものもある。もちろん着色料の全てが、健康に悪影響を与えるわけではありません。

しかし自然由来だから健康に良いと謳っている漢方が、自然本来のカタチで提供されていないのはおかしいと思いませんか?

--日常的に摂るものだからこそ、できるだけ自然本来の状態で届けると。健康意識の高い台湾人にとって、着色料を使わない漢方の方が安心して摂ることができる。漢方に対するマイナスなイメージを徹底的に排除する順天堂の姿勢があったからこそ、ここまで漢方文化が浸透していったのかもしれませんね。

そうであると嬉しいですね(笑)。私たちのおかげかどうかはともかく、実際、台湾人にとって、漢方は生活に深く根付いています。

ときに漢方は、季節の移り変わりを私たちに伝える役割も果たします。夏には菊の花茶​を飲んで熱中症を予防し、冬には生姜茶​を飲んで体を温める。

--漢方は、台湾人にとって四季を感じられるモノでもあると。

その通りです。生姜茶が出るようにあれば「もう冬かあ」というようにね(笑)。もちろん、私たちの人間の生理現象の周期も整える役割もありますよ。便秘になれば漢方を飲んで排便を促し、女性であれば生理前と生理後にも漢方を飲んで、周期を整える手助けもする。

--生理中には飲まない?

はい。基本的に生理中や妊娠中、授乳中の方にはオススメしていません。自分の健康状態によっては、漢方が悪い方向に効いてしまう場合もありますから。そういった状態のときは、しっかりお医者さんに見てもらって、必要な場合にのみ漢方を処方してもらうようにしてく ださい。

大切なのは、自分の健康状態に合った漢方を適切なタイミングで摂ること。闇雲に飲めば良いわけでもないんです。

--なるほど。それにしても、本当に漢方は台湾人の生活に密接しているんですね。

その通りです。台湾人にとって、漢方がどれほどに大切なモノなのかわかる例があります。

菊地さんは1000元札を持っていますか? 実は、台湾のお札には漢方の原材料が描かれているんです。

--他の国を見ても、お札にはその国の偉人だったり、名物だったりがよく描かれますよね。お札にまで描かれているというのは、やはり……。

それだけ台湾人にとっては大切なものなんですよ。まあ、台湾人でも気づいていない人もいるんですけどね(笑)。

世界的にも注目され始めている漢方

--アメリカでは、サプリメントとして漢方は飲まれているそうですね。世界的に見ても漢方の需要は高まってきているのでしょうか?

そうですね。そういった地域の方からも、漢方を求める声が増えてきているのは事実です。

漢方が世界的にもメジャーな存在になるのは嬉しいこと。ただアメリカやヨーロッパからすれば、漢方はもともとあったものではない。

そういった地域の方から需要が高まるにつれて、どうしても避けて通れないのが品薄状態。

需要量に対して、供給量が追いついていないんです。その結果、自然に生息している漢方の原材料が少しずつ減ってきている。

漢方の原材料になっている植物のなかには、人が栽培すると成分量が変わってしまう品種も存在します。漢方は他の野菜のように、美味しければ良いものではないんですよね。一番大切なのは、それぞれの成分が持っている効果・効能なんです。だから成分量が変わってし まっては、漢方としてちゃんと栽培できているとは言えない。

--たしかに成分量が変わってしまったら得られる効果・効能にも影響が出てしまいますね。では今後の目標は?

順天堂が描く未来

当面の課題は、人が栽培しても自然に生えているモノと変わらない成分量を確保することですね。私たちは、そのための研究も進めています。

あとはより多くの人に、漢方を知ってもらいたいですね。最近は漢方が苦手な人にも積極的に摂ってもらえるように、スナック感覚で食べられる漢方の開発にも力を入れています。

先ほどご紹介したクコの実もそうですが、その隣にあるスウィートジンジャーも、手軽に美味しく食べられるように甘みを加えています。ジンジャーが苦手な方やお子さんでも、美味しく召し上がっていただけるはずですよ。

--実際に僕も食べてみましたが、美味しかったです。本当に辛味が少なくてスナック感覚で食べられました。

ありがとうございます。順天堂では、こういったスナック感覚で食べられる漢方を増やしていく予定です。それが今はあまり漢方が好きでない人にも、漢方を手に取るキッカケになれば幸いです。

--そうなれば、漢方はより台湾人にとって身近な存在になりそうですね。順天堂のような企業が日本にもあれば、漢方は日本人にとっても身近な存在になるかもしれない。

実は今年、順天堂は日本にも子会社を設立しました。今後は、弊社の製品を日本でも目にする機会は増えると思います。これを機に日本人にとっても漢方が身近な存在になったら嬉しいです。

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