HOP!薬剤師

自分の中の「理想の薬剤師」を忘れずに

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。

薬剤師国家試験も終わり、いよいよ新年度を迎える時期となりました。この春から新人薬剤師として働き始める方は、国家試験の合否結果をやきもきしながら待っているところでしょう。

今回は自分の中にある「理想の薬剤師」の姿を見つめ直すことの大切さについて執筆いたしました。

※当サイトは口コミの一部を掲載しています。

日本薬剤師会から発表された「薬剤師行動規範」について

薬剤師の勤務先として、調剤薬局やドラッグストアが5割超、病院が約2割、医薬品メーカー等に約2割、その他行政機関等の割合になるようです。

さて、去る1月に日本薬剤師会から「薬剤師行動規範」が発表されました。

この行動規範は、昭和43年に制定された「薬剤師倫理規定」を今回「薬剤師行動規範」に改めたものです。

薬剤師行動規範は 15 項目からなり、今回「患者の自己決定権の尊重」、「学術発展へ の寄与」、「職能の基準の継続的な実践と向上」、「国民の主体的な健康管理への支援」といった新たな項目が盛り込まれました。 この行動規範は非常に簡潔なものではありますが、薬剤師の「あるべき姿」を示したものであり、薬剤師としての職責を担うにあたり、遵守すべき大きな道標になるのではないか、と思います。 シニカルな見方と言えるかもしれませんが、こうした行動規範が明文化されなければならない、というのは、現状の薬剤師の姿が「望ましい姿」から乖離しているのではないか、という懸念が持たれている、ということでもあります。

薬剤師を目指したときのことを忘れずに

今回誕生する新人薬剤師をはじめとする、6年制カリキュラム卒業生は、薬剤師としての倫理教育をしっかりと受けてきているかと思いますが、残念ながら、薬局など現実の職場では、そうした理想から大きく離れた状況下で業務が行われている場合があります。それらの問題が時折発覚し、処分などを受けるケースが報道されることもあります。(もちろん、とてもしっかりとした倫理観を持って業務に取り組まれている薬局さんが圧倒的に多いのですが……)。

ここでもう一度、自分達が薬剤師を目指した時のことを思い出していただきたいのですが、薬剤師を目指した動機は人様々だと思いますが、「薬剤師を目指そう」という決意をした時、それぞれ自身の中には、前述の倫理規定にあるような「理想の薬剤師」像があったのではないか?と思うのです。

それが、「郷に入っては郷に従え」「朱に交われば赤くなる」といったことわざが示すように、1度組織に入ってしまうと、その組織の風土やしきたりに次第に感化され、いつの間にか「理想の薬剤師」から離れた自分になってしまう――そんなことが起きているのが薬剤師業界の現状なのではないでしょうか。

新人薬剤師さんはもちろん、現在薬剤師として活躍している皆さんも、この薬剤師行動規範などをしっかりと見直しながら、自分が薬剤師を目指す決意をした時の「理想の薬剤師」像を、再度しっかりと見つめ直し、「組織人」である前に「薬剤師」、「薬剤師」である前に「人間」として倫理観を持って患者さんやスタッフ、他職種と接し、業務に取り組んでいくことが大切なのではないでしょうか。

この記事を執筆した人
パワーファーマシー
中央薬局 今泉店
薬剤師
船見正範
薬学部を卒業後、製薬企業の品質管理部門を経て、調剤薬局に転職。
社内のDI活動や、薬歴スキルアップ活動などを担当。地域の高齢者の薬物治療の適正化に役立ちたいと、高齢者薬物治療やEBMについて学び、その成果を学術大会などで発表を続けてきた。
現在は、地域の薬剤師仲間と、EBMや処方提案についての勉強会も主催している。
閉じる
もっと見る

HOP!ナビとは

転職やキャリアに関わるコンテンツを通じ、「今の仕事に悩む人」がより自分らしく働けるようにサポートしているメディアです。

不安のない転職活動や理想の転職先探しに役立ててもらうため、転職者や人材業界関係者へのインタビュー調査はもちろん、厚生労働省などの公的データに基づいたリアルで正しい情報を発信し続けています。

HOP!ナビ
HOP!ナビ-関わるヒトすべてをポジティブに-
さまざまな業界で「今の仕事に悩む人」がより自分らしく働くためのサポートをするメディアです。
詳しくはこちら

関連記事

薬剤師の生涯学習にもPDCAが必須に!学習の心得とポイントとは

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。   2016年度調剤報酬改定から始まった「かかりつけ薬剤師」制度では、かかりつけ薬剤師となるための条件として、…

  • 🕒
  • 2020.06.23更新

仰天!新卒薬剤師がマツキヨで体験した今だから語れるエピソード3選

こんにちは。薬剤師なのに調剤が苦手という理由で新卒でマツモトキヨシに入った「まりも」です。現在はHOP!薬剤師をはじめ、複数の医療関係メディアでライターとして活動しています。 さて今回は、私が…

  • 🕒
  • 2020.06.23更新

証券会社から調剤薬局へ転職⁉|ココが特殊だ薬剤師業界

現在、HOP!薬剤師の記事を執筆させていただいているけちゃおと申します。私は薬学部卒業後、証券会社、製薬会社でそれぞれ営業を経験して、現在は調剤薬局にて薬剤師をしています。 業種が変われば仕事…

  • 🕒
  • 2020.06.23更新

薬剤師による在宅訪問業務を介護保険の“理念”にかなうものに

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。 先日、日本経済新聞・電子版でとても興味深い記事を目にしました。  

  • 🕒
  • 2020.06.23更新

ポリファーマシーの解消と減薬提案

高齢者の患者さんに接する機会のある薬剤師は肌で感じているかと思いますが、高齢になると服用する薬が増えていく傾向にあります。中には「こんなに飲んでいて大丈夫なの?」と、心配になってしまうほどたくさん…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

「医・薬・介」三位一体の重要性と促進

周知のように、我が国の国民医療費は年間42兆円を超えており、今後も急激な高齢化による増加が予想されています。2025年には54兆円を超えるとの試算もあります。   国民医療費42兆円のうち、調剤医療費が7.5兆円…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

疑義照会のトラブルはなぜ起きてしまうのか?疑義照会を円滑に行うた…

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。 調剤における薬剤師の業務の中で、もっとも重要な仕事の1つとして“疑義照会”があげられます。 薬剤師法第24条では、…

  • 🕒
  • 2019.12.11更新

災害医療における薬剤師の役割|求められる臨床力

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。   1995年1月の阪神・淡路大震災、2011年3月の東日本大震災を教訓に、各自治体では、広域災害時の医療体制や対…

  • 🕒
  • 2019.11.08更新

細菌の薬剤耐性化のリスクと薬剤師が出来ることとは

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。 今冬のインフルエンザシーズンでは、2018年に発売されたインフルエンザ治療薬ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)の耐性…

  • 🕒
  • 2019.11.08更新

今後レッドカードが言い渡される薬局が出てくる⁈取り巻く環境の変化…

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。   現在、調剤をメインの業務とする保険薬局、いわゆる“調剤薬局”の運営は過渡期を迎えています。大手チェーンに…

  • 🕒
  • 2019.11.08更新

「命の値段」はどう計算するのか?

こんにちは!栃木県宇都宮市の保険薬局で管理薬剤師を務めている船見です。 6月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)の部会で、薬の値段が効果に見合っているかどうかの基準づくりのために計画してい…

  • 🕒
  • 2019.10.08更新

高齢者のポリファーマシーへの処方提案事例紹介|第4回 抗コリン…

この数年、多剤併用、いわゆるポリファーマシー(polypharmacy)の話題が注目を浴び続けています。 ポリファーマシーには、多剤併用によるアドヒアランスの低下、残薬問題だけではなく、多科受診による…

  • 🕒
  • 2019.08.02更新