薬剤師とセラピストの二足のわらじで職種にとらわれない働き方を提唱

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働き方改革が叫ばれる昨今、薬剤師業界でもパラレルキャリアを目指す人が増えています。

今回お話を伺った佐藤澄江(さとう・すみえ)さんもそのひとりです。漢方薬剤師とドッグセラピストの二足のわらじで仕事を両立。パラレルキャリアを決意したきっかけと、両立するコツについて伺っていきます。

▲佐藤澄江(さとう・すみえ)さん

薬剤師の資格を取得したのち、派遣薬剤師として都内およそ10店舗の薬局に勤務。幼少の頃から悩んでいたアトピー性皮膚炎をセラピードッグで完治し、自身の実体験をきっかけに、薬剤師の傍らセラピードッグの活動にも精力的に力を注いでいる。

きっかけは偶然観ていた韓国ドラマ

渡辺:まずは、佐藤さんが薬剤師を目指したきっかけについて教えていただけますか?

佐藤さん:高校生のときに流行っていた『宮廷女官チャングムの誓い』という韓国ドラマの影響が大きいですね。学校が休みの日になんとなく観ていただけだったんですけど、食事のシーンで必ず薬膳料理が出てくるんです。生薬ひとつとっても、新陳代謝、冷え性、生理痛の緩和とか色んな効能があって、本当に奥が深いからしれば知るほどおもしろくて。

渡辺:「身内が医療関係で」という話はよく聞きますが、きっかけが韓国ドラマってちょっと意外で驚きました!

佐藤さん:そうですよね(笑)。薬膳料理は肌荒れや体質改善にも良いので、ずっと悩んでいたアトピー性皮膚炎にも効くかもしれないなと。それと、肌がきれいだと自分に自信を持てるようになるので、純粋に私と同じように肌に悩みを抱える人の力になりたいと思いました。

それで、日本で唯一、漢方薬学科がある日本薬科大学に入学しました。薬学部を卒業後は病院の薬局に勤めたのですが、自分の薬剤師としてのあり方を考え直すいいきっかけになったと思っています。

渡辺:と言いますと?

佐藤さん:何百人もの入院患者に薬を用意する日々を繰り返すうちに、自分のなかで疑問が生まれたんです。「あれ?私がなりたかった薬剤師ってこんなんだっけ?」って。

肌の悩みを抱える女性を後押しできる存在でありたい、自分と同じ悩みを抱える人の支えになりたい。そう思って薬剤師になったはずなのに、忙しい毎日に終われるあまり今ある目の前の仕事をただ「こなす」だけで、患者さんと向き合うことが後回しになっていました。

渡辺:佐藤さんが目指していた薬剤師としての姿ではないと。

佐藤さん:「このままではいけないな」と焦りを感じ、環境を変えて調剤薬局にも勤めてみたのですが、やっぱりどこか腑に落ちなかった。

忙しいと物理的にも心理的にも、患者さんひとりひとりとじっくりコミュニケーションをとる余裕がなくなってしまう。風邪やインフルエンザが流行る時期だと尚更です。1日中立ちっぱなしで、何百人もの患者さんの薬を調合する薬剤師の仕事は本当にハードなので、仕方がないことなのかもしれません。

でも、ただ医師が出した処方箋通りの薬を患者さんに渡すだけ、という働き方は私の目指す薬剤師としての姿ではない。そんなモヤモヤした気持ちを抱えつつも、何か新しいことに挑戦する勇気もなかったんです。一度考えはじめると寝ても醒めても仕事のことばかりでだんだんとストレスがたまり、幼い頃から悩んでいたアトピー性皮膚炎が悪化してしまって。

渡辺:ストレスは美肌の大敵ですね。マスクをつけると擦れて肌荒れが悪化したり、人に見られるのが嫌で人との関わりを避けてしまったり…。

佐藤さん:本当にその通りで、当時は自分の顔を鏡で見るのもイヤなくらい、アトピーが悪化していました。ステロイドを患部に塗る治療もしていたのですが、副作用で皮膚が象のように固くなってしまったんです。人前に出るのを避けていた一番辛かったとき、私が唯一心を開くことができたのが犬だった。

「薬剤師×ドッグセラピー」のパラレルキャリア

佐藤さん:犬と触れ合っているときだけは、まわりの目も気にせずありのままの自分でいられたんです。それまで抱えていた仕事の悩みも吹き飛ぶくらい、肩の荷がスーッと下りて軽くなっていくのを感じました。

渡辺:動物と触れ合うことで心が癒されるという経験は私自身もありましたが、そこまで効果があるんですね。

佐藤さん:前までは、肌を人に見られるのが嫌で真夏でも長袖を着ていたんですけど、今では堂々と半袖を着られるくらいアトピーもきれいになりました。あと、必要以上にメイクで隠す必要がなくなったので、朝もギリギリまで寝ていられるのが嬉しい(笑)。

こういった自分の経験を通して、私と同じように苦しんでいる人の心のケアができないだろうかと考え、薬剤師の仕事と並行してセラピードッグをはじめることにしたんです。

渡辺:ご自身の実体験がきっかけになっているんですね。薬剤師の仕事の傍らセラピードッグの仕事もとなると、両立するのってさすがに大変ではないですか?

佐藤さん:大変なことは山ほどありますが、強いて言えば時間管理でしょうか。今は派遣という形で週5日で都内の調剤薬局に勤務し、合間にイベント参加などセラピーの活動をおこなっています。なので、スケジュール管理がとても重要です。予定がブッキングして当日キャンセルなんてことになったら、信用を失ってしまいますからね。

渡辺:いずれはセラピードッグ1本、薬剤師1本に絞ることも考えていらっしゃるんですか?

佐藤さん:両方とも、これからも続けていきます。正直な気持ちを言えば、セラピー活動にもう少しウエイトを置きたいところではありますが、セラピー活動だけでは生活が成り立たなくなってしまう。というのも、今おこなっているセラピー活動のほとんどはボランティアなんです。

渡辺:日本は、セラピードッグへの認知度や理解がまだまだ低く、正式に受け入れてくれる医療機関は少ないと聞きます。ボランティアばかりになるのは、そうした日本の医療機関の理解を得られないことも原因なのでしょうか?

佐藤さん:そうですね。日本では、どうしても「犬=汚い」というイメージが強い傾向にあります。吠えたり噛んだりする心配や、何より衛生的によくないという理由から断られてしまうケースが多いんです。

ドイツやイギリスでは患者さんに薬を処方するのではなく、「犬を飼いなさい」という処方が国でききちんと認められていたりする。それを日本の医療機関でとなると、患者さんの理解など超えなければならないハードルがたくさんあります。

メンタルヘルスのできる環境づくりを広げたい

渡辺:体調が悪くなったら病院に行くか薬を飲むかの2択で、セラピードッグという選択肢は今まで考えたこともなかったです。

佐藤さん:「セラピードッグ」という言葉でくくるから、難しく考えてしまうだけ。要は、犬とのふれあいを通して心のストレスを和らげましょう、というシンプルなことなんですよね。

渡辺:でも、日本でセラピードッグが普及していないなかで、どうやって啓蒙活動をしているんですか?

佐藤さん:間口は少ないものの、Facebookで自分の活動を呼びかけていたら、「うちの薬局にもぜひ来て欲しい」とお声がけをいただいたり、薬局主催のイベントに呼んでいただくことも増えてきて。本当に嬉しい限りですね。ただ、今はセラピードッグの導入で症状が改善されたという数値化したデータがあるわけではないので、まだまだ課題は山積みです。

まとめ

佐藤さんは今後の活動については、「薬剤師という職種に捉われるのではなく、これまで培った経験や知識を活かし、メンタルケアができる在宅医療にも力を入れていきたい」と語ってくれました。悶々とする日々の中で見つけたもうひとつキャリアが、佐藤さんにとってはセラピストという道だったようです。

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