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仕上がりに満足したクライアントに宣伝されて困ったことになるとは

職業:デザイナー
困った依頼:チラシ作成(担当デザイナーのひとりとして)

私の住んでいる地域は、決して都会ではありません。そんな環境でデザインの仕事をするのは、とても難しいものです。

ある日依頼されたのは、地域を活性化させようと活動している団体の方でした。「街でイベントをするので、そのチラシが作りたい。予算はそんなにないが、なるべく良いものを作りたい」というものでした。自分自身、地域をデザインの力で活性化できたらと考えていたので、そのときは低予算でも精一杯協力していいものを作ろうと思って意気込んでいました。しかし、このクライアントとの出会いが、その後大変な事になるとは思っていませんでした。

依頼をしてきた団体は、50代から60代の男性が主でした。チラシを作成する上で、チラシのイメージや詳細な情報を聞かなければ作業に取りかかれないので、何度かお会いして打ち合わせをしました。

そもそもイベントの内容がなかなか決まらなかった

しかし、中々詳細なイベントの内容が決まらなかったのです。イベントの日はどんどん迫ってくるのに、詳細が決まらず、チラシのデザインを進めることが中々できませんでした。ずっと待っていては到底間に合いそうになかったので、決まっていない情報を入れる部分だけを残して作業することにしました。

クライアントからも、残りは大体このくらいの情報が入ると言われていたので、その分のスペースを空けていました。でも、やっと情報が来たと思ったら、その空けていたスペースを遥かに超える情報が手元に届いたのです。

A4サイズ両面のチラシに入れるには、とても無理な文字数でした。私はデザイナーとして、見やすさや美しさにこだわりたかったのです。小さなイベントでも、多くの人が手に取ってもらえるようなチラシにしたかったのです。

しかし、クライアントは全く無視。デザイン性を気にして、文字の大きさを小さくしてレイアウトしてみましたが、「年寄りには読めないのでもっと大きな文字でなければ困る。」と言われました。読みやすさを重視した空間や行間も、「ここにスペースがあるならもっと文字を大きくできるし、もっと文字も増やせる」とまで・・・。

納得いかない仕上がりで納品せざるをえなかった

こちらが色んな手を使って提案しましたが、結局出来上がったチラシは、文字でギューギューになったチラシでした。本当はもっと考えていい方法を探したかったけれど、印刷にまわす時間も考えると無理でした。

田舎では、こんなことはよくあります。デザインにこだわりたくても、クライアントの要望を詰め込んでいると、考えていたものとは正反対のものが出来上がってしまうのです。そこでデザイナーの思いをぶつけても、ご年配の方には勝てません。ましてや、そのクライアントを怒らせてしまうようなことがあれば、たちまち噂は広まり仕事が無くなってしまいます。

はじめはとてもその状況が苦しかったのですが、自分では満足していなくても、ご年配のクライアントが満足してくれたらそれでいいと思うようになりました。

宣伝されて逆に困った

ただ、そのチラシを作ったときに困ったのは、そのご年配のクライアントが宣伝をしてくれたことでした。私としては、今までの中で一番ダメなデザインだと思っていたのですが、クライアント側は自分たちの盛り込みたいことが全て入ったそのチラシをとても気に入っていたようで、「このチラシは、あそこのあの人に作ってもらった」と色んな人に話したのです。

本来であればとても嬉しいことなのですが、そのチラシは、多くの人がこんなチラシを作るの・・・?と思うほど良いものではありませんでした。なので、こんなものしか作れない人。と思われるのがすごくこわかったでのす。いつもは納品すれば終了。苦しかった打ち合わせや思い通りにいかないデザインもそこで終了。新たな気分で次の仕事に取りかかれるのですが、このときだけは、納品してからもしばらく気分が悪かったのを覚えています。