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紙媒体とweb媒体の違いを理解できない73歳の高齢社長

職業:webデザイナー
困った依頼:出版物の紹介サイトの開発 

当社は専ら個人や企業のWebサイトの作成・管理を行っております。拠点を地方に構えており、web上での取引もしてますが、売上的には地元からの引き合いが圧倒的に多いというのが実情です。なお、屋号を掲げてますが、社長兼従業員なので、実質的にはフリーランスの部類に入るでしょう。

ITのアの字も知らない人たち

「困った依頼」をするお客さまは、そんな地元のお客さまです。先に紹介しましたとおり、顧客のほとんどが田舎の斜陽化した中小企業です。メールではなく電話で御依頼を受け、会社(自宅)へお伺いすると、パソコンすらなく、「なんか儲かるっちゅうで、ホームページちゅうもんを起ち上げてみたいんだけど」という御依頼がけっこうあります。

そういうアナログな世界だからこそ、私のような者でも商売が成立しているので文句は言えませんが、この「ITのアの字も知らない人たち」には本当に泣かされます。

73歳の高齢社長からの依頼

その中でも最近泣かされたのが、地元出版社の73歳になる社長です。地元情報を紹介するフリーペーパーを編集している会社で、従業員は5名ほど。さすがにパソコンはありましたが、社長自体はまったく使えません。当然、ケータイはらくらくホンです。依頼先の担当はもちろん、その老社長でした。

依頼内容は、その会社の出版物を紹介するwebサイト作成です。田舎の高齢者にありがちですが、話が恐ろしく持って回っていて、何を言ってるのかまったくわかりません。それでも根気強くヒアリングしていると、次のような要望でした。

1.どうも最近広告が取れなくて困っている。
2.原因を調べたところ「最近の若い連中」は、「今どき紙媒体に広告効果はない」と断られるケースが多い。また、「出版物のホームページがありますか」と言われると二の句も出ない。
3.そこで、出版物のホームページを作りたいのだが、同時に、アフィリエイトとかいうネットビジネスにも参画したい。 
というものでした(ここまで聞き出すのに半日かかりました)。

ページ数はメイン1にサブ3ページ、製作期間は1か月、費用は10万円。大きなプロジェクトを受けた場合は外注しますが、ホームページ作成ソフトで十分な内容なので直営で行うことにしました。

費用的にもニーズ的にもブログ型のwebサイトを提案しました。ただ、技術的な話に関しては、老社長は生返事でしたが。

紙媒体=web媒体という間違った発想

さて、その老社長で一番困ったことが「紙媒体=web媒体」という発想だったことです。紙媒体とweb媒体の客層(広告効果)はまったく違います。紙媒体の場合、閲覧者は「なんとなくページを開いたら」と受動的ですが、web媒体の閲覧者は検索サイトにキーワードを入れるので積極的です。

そのため、雑誌とはまったく違うアプローチをしなくてはいけません。それなのに、何遍言っても理解してくれないのです。話が難しくなると「わかった、わかった。そっちでうまく頼むよ」との生返事。まあ、これもよくある話なので、さっそく製作に移りました。

まずはデザインの確認。ノートパソコンでテンプレートを選んでもらったところ「眼がチカチカする。紙に印刷してくれ」といわれました。しかたないので印刷しましたが、当然化けます。

すると今度は「画面と印刷が同じでないとダメ」とのこと。技術上それは無理と回答したところ、「それでは、印刷時のデザインを優先しろ」ということになりました。

言っても聞かないので、メンテナンスフリーのブログ型から1から作り込んだWebサイトに仕様を変更しました。当然、費用が嵩むことを告げたのですが「ページ数を減らしていいから10万円で納めてくれ」とのことでした。

SEO対策もさせてもらえず

ページ内の記事についても私が請け負ったのですが、これまた不評。SEO対策を意識した、同じ言葉が頻発する「紙媒体では典型的な悪文」が気に入らなかったようです。

社長も書くことに関してはプライドがあったのでしょう。「紙の打ち出し」に真っ赤な訂正を入れて突き返されました。「やれやれ。若者の文字離れには困ったものだよ」。いちいちコンサルする気が失せていましたので、「すみません、学がないもので」と引き揚げ、真っ赤に書き直された「打ち出し」に、髪の毛を逆立てながらタイピングしたものです。

とにかく、モニタ上で見ると化けまくり、それ以前に検索しても引っかからないwebサイトを納期までに仕上げ、代金も頂きました。

納品後も、パソコンの具合が悪いから見てくれ

こっちこそ「やれやれ」でしたが、数日後、電話があり、すぐ来いとのこと。瑕疵もあるので、しぶしぶ事務所へ出かけたところ、「なんか、パソコンの具合が悪いみたいだから、ちょっと面倒見てくれないか」

それからが地獄でした。その手の依頼がちょくちょく入ってくるのです。最初はこれも営業と引き受けていたのですが、あまりに頻繁なのでお断りしたところ、「10万円も払ったのに、なんだ!」と来ます。

その程度の金で客づらされたらたまりません。Webサーバーのレンタル費用込みの契約だったのですが、更新時にこちらからお断りしたほどです。

たとえネットビジネスとはいえ、多少採算割れしても、お客さまに喜んでもらえる「よい仕事」をしたいというのが、私の思いです。ですから、その「よい仕事」ができなかったときが一番つらいですね。