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大規模PJだからと安易に受注をしたら、異常なまでコストに厳しいユーザーだった

 

職業:システムエンジニア
困った依頼:ユーザ社内システムの刷新 

競合他社から勝ち取った案件

私が参加したPJでユーザーの激しいコストカットで困った経験があります。当時の私はIT企業にシステムエンジニアとして勤めており、PJを現場レベルで統括するリーダでした。そのPJはユーザーの社内システムを旧システムから新システムへ刷新するものであり、長くうちの会社が提案し続けてやっと受注にこぎつけた案件でした。

そのユーザーは日本全国に支社を持ち、地元に密着した企業でした。規模的にも従業員が数千人を擁し、東証1部上場企業でした。私たちの会社はその会社の受注を取りたく、提案し続け、競合他社から勝ち取った案件でしたので、社内的にも注目度の高い案件でした。

そのようなPJに参加できたことは光栄なことで、私を含めた社員が皆、やる気に満ちてPJがスタートしました。

金額を抑えないと他社へ乗り換えるとの脅し

PJがスタートするとまず大まかなシステム規模を考えますが、当初の提案から大幅に要望が増え、全て満たすには提案段階で提示した見積りから倍近く費用が掛かる試算になってしまいました。さすがにそれは払えないということでしたが、要望は減らせないというのがユーザーの言い分です。

こちらとしてもこのままでは大幅な赤字となってしまうので、機能を絞り込みましたがユーザーとの間でどうしても数億円の差が出てしまい、その溝はどうしても埋まらなかったので、PJの本番を段階的に踏んで進めるという案に切り替えてPJがスタートすることになりました。

しかし、提案段階ではわかっていなかったユーザーの本性が出てきて、何とかある金額でこのシステムを抑えないと他のIT企業へ変えると脅してくるのです。私たちIT企業ではそのようなことはたまにあり、最悪は訴訟沙汰になるケースもありますが、それだけはどうしても避けたく、ユーザーの提示する金額でなんとか盛り込むことを合意しました。

劣悪環境のPJルーム

提案時に分からなかったユーザーのコストに関する執着は、システム見積もりの金額にはとどまりませんでした。PJが進むにあたり、私たちが自社で作業するのではなく、ユーザーの近くでいつでも打合せや相談が出来るよう、ユーザーの本社にPJルームを作ることになりました。

大規模なPJではそうしたことは珍しくなく、私もいつものことだと思っていましたが、このユーザーではこんなところでもコストに対する執着心を見ることになりました。

それはPJルームとは名ばかりで本社社屋の中ではなく、本社社屋の近くにある講堂の資材準備室が割り当てられました。学校で言うところの体育館の倉庫みたいな場所です。夏は暑く冬は寒いところです。

もちろん講堂の資材準備室なので、マイクやパイプ椅子、ピアノなどがあり、それらは別の場所に移動するでもなく、隅に寄せて空いたスペースをPJルームとせよとのことで、こんな劣悪な環境は初めての経験でした。

さらに講堂内に給湯室があるのですが、長く使われていなかったせいか異臭がし、水道からは工業用水が出るようで飲むなという張り紙が貼られています。給湯室の水道が飲めないというのもおかしな話です。

作業に必要な電気容量が足りない

それらは私たちの我慢でなんとかなったのですが、一番困ったことが電気容量が足りなかったことです。PJが30人体制で敷かれている中、30名がそのPJルームに押し込まれることになります。

各メンバーがパソコンを持ち込みますし、ユーザーからプリンタなどは貸せないとのことから、自前でプリンタやサーバーなどを持ち込み体制を整えたのですが、PJルームへ引っ越してすぐに講堂のブレーカーが落ちてしまいました。

私たちはこれでは仕事にならないのでユーザーへ電気容量をあげてもらうようお願いしましたが、コストが大事なユーザーはそんな工事をすればお金もランニングコストも掛かるということで受け入れてもらえませんでした。

しかたなく、PJメンバの半分は自社での作業とし、PJルームのメンバでもプリンタなどを使うときには、パソコンを落として印刷したりなど、後にも先にも初めての経験でした。

突然システム本番の延期通告

段階的に分けたPJも残業しながらも必死にメンバが構築しやっと最初のシステム本番が、スケジュール通りの導入できる目処が経った頃、急にユーザーからシステム本番の延期を言い渡されました。

理由を尋ねると、ユーザーの繁忙期のためシステム導入により通常業務に支障をきたすというのが原因とのことです。それについてはこちらも猛反発しました。

繁忙期の導入はシステム全体のスケジュールを作成した時点で分かっていたことであり、それも加味してもその日程で行いたいというのがユーザーのそもそもの要望であり、ユーザーの役員承認も貰っている決定事項でした。

3ヶ月延期したいが費用の増額はなしとの要求

それをいざ、目の前にシステム本番が差し掛かるとできません、というのはこちらとしては到底受け入れることができませんでした。さらに驚いたのは約3ヶ月延期したいとのことですが、費用の増額はできないので、広く薄くやってくれと言うのです。

システム構築に広く薄くなんて聞いたこともなく、薄くやるなら、人員をそのPJに専属で参加することは難しく、支援できないことが多くなりますと伝えると今度はそれはダメだというのです。

システムエンジニアとしてユーザーの要望に応えるのは当然であり、人員を減らしても支援はしっかりとやって欲しいというのです。要はお金は出さないけどPJは延期して、支援体制はちゃんとやってねということでした。

私たちは自社の管理職とも相談し方針を決めました。最終的には、ユーザーの要望を飲むしかなかったのですが、こちらは人員を減らし、残された人員で今まで以上の作業を強いられることになりました。

コストに対して厳しいお客さんは多いですが、今回のユーザーは異常なまでに厳しいユーザーでした。残った人員で最後までシステム導入を行うことができましたが、こちらの原価的には厳しいPJとなり、このPJを教訓に大規模PJだからといって安易に受注しないよう、社内の受注事前チェック体制が敷かれることになりました。

結果的にこのPJを受注して良かったと言う社内の管理職もいますが、参加した私からすると、今までに類を見ないユーザーに困り、疲れた果てました。