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傲慢な経営者と、小細工で事実を隠蔽する部下たちにより、サイト制作は中止

 

職業:webディレクター
困った依頼:調剤薬局のオフィシャルサイト 

ある地方都市圏に10店舗以上展開する中堅の調剤薬局チェーンのオフィシャルサイト制作の仕事で、私はディレクターとして担当しました。契約から予算調整、制作の打ち合わせを行う立場で、クライアント側は主に複数店を取りまとめる中間管理職のマネージャーさんが担当。物腰も柔らかく、人当りの良い感じの良い方でした。

当初は原稿協力も得られ、順調に進行

立ち上げるサイトは企業としてのポートフォリオと、展開している薬局の紹介が中心となるもので、それほど大きな規模ではありません。クライアント側からの原稿協力も得られ、見積についても即答で特に大きな問題はなく、順調に進行できる状態。仕事としては難しいものではありませんでした。

制作チームは私を入れて4名体制。私の進行管理のもと、デザイナー2名とプログラマー1名で担当。100ページほどのコンテンツを構築期間3か月で立ち上げるというもので、当時の感覚としては、納期もそれほどタイトではなく、デザインと簡易CMSの設置を行えれば、あとは力仕事という感じで、時間も読みやすいプロジェクトといえました。

実際、デザインから校正、システムの仕様確定、HTMLコーディングまで、流れるようにスムーズに進行。和やかなムードとクライアント側のチームからも満足の表情や信頼を感じ、とてもモチベーションが高くやりがいのある状態で仕事が進んでいきました。

先方代表が突然乱暴な口調で怒鳴り出す

ところが、事件はコンテンツがほぼ仕上がって、これから細かな調整に入るという段階で発生。あと3週間で公開というタイミングで思わぬ展開となります。あれは、忘れもしない夏の昼下がりの打ち合わせのときでした。

いつも通り、資料とPCを携えて本社に伺った私でしたが、クライアントの担当者が会議室に来るなり、すぐにいつもと違う雰囲気を感じました。そして、開口一番、「本日は弊社代表もミーティングに参加させていただきます」。その瞬間はそれほど疑問視せず、上役が入るので、皆緊張しているだけだと思っていたのですが…。

遅れて入ってきた代表取締役。その時始めてお会いするので、ご挨拶と名刺交換と思った矢先、私の目の前で乱暴な勢いで腰を下ろすと、ものすごい形相で私を睨んでくるのです。大柄な体形で見た目は中尾彬さんと安岡力也さんを足したような、とにかく迫力のある社長さんです。

次の瞬間、耳を疑いました。「おい、ふざけてんのか!?」その社長は初対面の私に対して、まるで部下を叱責するような口調で怒鳴ります。「うちの要望をまったく聞かず、押し売りするつもりか? そんなに納品をいそぐんか?え?」いったい何に対してのことなのか全く理解できず、私は呆気にとられてしまいました。

先方担当者たちは知らんぷり

「大変恐縮ですが、私どもの対応で何かご不満がおありでしょうか?」思わずストレートに尋ねましたが、油に火を注いたようで、さらにエスカレート。ほとんど言い掛かりじみた内容をまくし立てられました。

とにかく現在構築しているものが気に入らないこと、金が高すぎること、さらに、いまさらになってコンペにすることなど、それはひどいクレームというより、まったく身勝手で到底納得できない理不尽な意見だったのです

その社長がまくし立てる間、何か誤解があるものと、同席している先方の担当、チームのスタッフに目くばせをしたり、話をふったりしたものの、ひどいことに全員無視に近く、あさっての方向を向く始末。

もう何がなんだか、まったく訳が分からない事態になっていました。およそ、社会的立場のある方の話し方とは思えない、汚い言葉でまるでヤクザのような言いぶりでした。

先方決済が取れていなかったことが判明

少なくとも私自身は、多少あくの強い顧客もおりましたせいか、その場は激昂することはなく、始終冷静に受け答えができ、頭では今後どうしたものか混乱しつつも、一旦持ち帰らせていただくことにし、早々に退席させていただきました。

その後、社にもどってから、同席した担当氏にすぐに電話をし、説明を求めました。さすがに電話口では平謝りされ、少し時間が欲しいとの返答。どうも先方の社内的な問題が原因で、決裁がうまくとれてなかったこと。そして、その責任を外注先の当方のせいにしてうまくかわすというような、呆れてしまう内容でした。

そのことをそのままこちらに言うのも問題と思いつつ、事態については理解でき、作業は一旦保留に。

もともと創業者のワンマン経営であることは聞いていましたが、まさか企業の顔であるサイトの構築が、代表の確認も取らずに進行していたこと、また、あたかもOKが出ているかのように、こちらに伝えてきていた点、まさにその会社の体質が表れているような出来事でした。

結局サイト制作は中止に

結局、サイト制作は完成を見ることなく中止に追い込まれ、こちらとしては作業相当分の請求を立てさせていただく形を提示。そこから、数か月間、払わないだの、損害賠償だの(何の?)散々ごねた挙句、弊社の役員から別ラインで話を通させて、解決となりました。

請負で制作する仕事では、時々意を汲めずに苦労することはあります。しかし、今回のように傲慢なトップに対して、部下が小細工のように隠ぺいしながら仕事を進め、あとから大きな傷口になって問題となるケースは、企業間の取引としてはあってはならないことです。

また、相手を信頼していたとはいえ、そのような状況に全く気付けなかった自分を情けなく思う一件でもありました。この会社は、今でももちろん存在し、社長さんは催しで講演したり、セミナーをやったりして、それは立派な発言をしておられます。

たまたま虫の居所が悪かったのかもしれませんが、私はこの案件を忘れることができません。ある意味、とても勉強になりました。