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フォントやキーカラーなど、自分の好みを押し通そうとするデザイナー

 

職業:編集者・アートディレクター
困った依頼:出版社のウェブサイトリニューアル 

出版社に勤めていた際に、出版している雑誌の紹介を含む自社ホームページのリニューアルを知人から紹介されたウェブデザイナー兼ディベロッパーさんに依頼することにしました。

長年フリーでさまざまな雑誌社の仕事・ウェブデザインを担当されているとのことで、出版という部門やさまざまな紙媒体をウェブで展開していく際に、それまでの経験を生かしていいものをつくってくれるのではないかということで彼に依頼することになりました。

とにかくデザインセンスが無い

その際にまず問題となったのは、とにかくデザインのセンスの引き出しの少なさでした。また、自分のデザインに固執するというような一面も見られ、その点をじっくり話し合いながらデザイン案を修正していくのにかなり苦労しました。

10人ほどで進めていたプロジェクトでしたが、デザイナーさんの頑固さにプロジェクトが頓挫しかけるようなシーンもあり、徐々にミーティングに参加するメンバーも少なくなっていき、私はデザインとコンテンツをはじめ、サイトの全体的なアートディレクター的な役割を務めていたので、大変苦労しました。

緑とオレンジのキーカラーを使いたがる

とくに苦労したのはウェブサイトのキーカラーと使用するフォントを決める時でした。これは後になって気づいたのですが、彼のポートフォリオを見ると緑とオレンジの組み合わせがとにかく多かったのですが、これが彼のデザインの鉄板らしく、とにかくこの2色を使いたがるのです。

ところがこの色はうちの会社には合わなかったので、キーカラーをめぐってさんざん話し合いを重ねました。結局サイト全体のキーカラーは別の色をメインで使う形で納得してもらい、そのかわりといっては何ですが、出版している雑誌の中の一冊を紹介するページで彼のイチオシカラーである緑とオレンジの2色を使う形に落ち着きました。

年齢が40代のデザイナーさんだったということもあり、ある意味センスやデザインの幅がすでに動かしようのないものになっていたのかもしれません。よく言えばこだわりが強い、悪く言えばとにかく頑固といでもいうのでしょうか。このサイトのキーカラーをめぐる説得にとにかく時間がかかりました。

こちらのオーダーよりも自分の好みを優先

またフォントやその他のデザインをはじめ、とにかくこちらのオーダーというよりも、自分の好みのデザインにしたがるという一面があり、その点にも苦労しました。それがセンスの良いものであれば多少納得はいくのですが、古くさい印象のデザイン案が多く、また提案してくるデザインの切り口もそれほど多くなく、この点に関してもかなり話し合いを重ねました。

センスの良い方であればかなりおまかせするつもりでしたが、このままではまずいと思い、アイデア出しの段階からこちらでもかなり資料や参考になるサイトなどを提案していきました。

依頼前にもっと作品に目を通すべきだった

知人からの紹介ということで、一度面接をして経歴を聞き、ポートフォリオをざっと見てプロジェクトの依頼を決定したのですが、もっとじっくり作品に目を通して選んでおけばこのような苦労はなかったかもしれません。

自社ウェブサイトのリニューアルということで、私の会社にとっては大きなプロジェクトだったこと、またウェブサイトという専門性の高い媒体のリニューアルだっただけに、面接の際にテクニカルなことに質問が集中してしまったということも、後々デザイン面でくろうすることになった原因のひとつといえるかもしれません。

テクニカルな面は経験豊富

良かった点は、ウェブサイトを構築する上でのテクニカルな面は、さすが経験が豊富なだけあって、こちらをリードしてもらう形でいいお仕事をしてもらえたと思いますし、こちらも大いに勉強になりました。

今思うと、彼はどちらかというよりもテクニカルなお仕事の方でかなり稼いでいて、年齢の割にはデザインの方はまだ駆け出しの方に近いのかもしれないとも思いました。

彼にとっては、得意としているウェブディベロッパーという役割では力を発揮でき、デザイン面ではこちらとの話し合いを通してかなり得るものが多かったプロジェクトなのではないかなと思いました。

これから彼がデザイナーとして力を伸ばしていくには、どれだけ素直に他人のアイデアやクライアントの要望に耳を傾けられるかということにつきると思います。

半年の予定が10ヶ月かかってリニューアル完了

終わってみれば、半年で終えるはずのウェブサイトのリニューアルに、倍の期間まではいかないまでも10カ月ほどを要しました。

話し合いに話し合いを重ね結局はいいものはできたので満足はしていますが、プロジェクトを依頼する段階でウェブデザイナーがどれだけの力量をもっているのか、得意分野・不得意分野は何かということをきちんと見据え、どこまでをその人に発注するか、また、足りない部分はどのような形でデザイン力や技術力を補填していくかということをしっかり考えて仕事を発注する必要があると思いました。

初回発注時は事前にポテンシャルを探るべき

このような経験から、場合によっては技術面は彼にまかせて、もう一人デザインに特化したデザイナーさんを雇うという手もあったのかもしれないという結論に至りました。

なかなか面接だけで本人が持つ力を見極めるのは難しい部分もあるので、大きなプロジェクトの前に小さめの案件を発注してポテンシャルを探るなどの方法も、場合によっては有効かもしれません。